『プリズナーズ』(2013) - Prisoners –

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久し振りに見応えを感じたクライム・サスペンス。小さな娘達の誘拐事件を中心に、2組の家族、捜査担当の刑事、犯人と思われる人物達の、日常が失われていく様子がリアルに描かれる。台詞を多く使わない主役2人の演技に引き込まれ、時間の長さは全く気にならない。メリッサ・レオもまたもやいい仕事をしていた。

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■ プリズナーズ - Prisoners – ■
2013年/アメリカ/153分
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:アーロン・グジコウスキ
製作:ブロデリック・ジョンソン 他
製作総指揮:エドワード・L・マクドネル 他
撮影:ロジャー・A・ディーキンス
音楽:ヨハン・ヨハンソン
 
出演:
ヒュー・ジャックマン(ケラー・ドーヴァー)
ジェイク・ギレンホール(刑事ロキ)
マリア・ベロ(グレイス・ドーヴァー)
テレンス・ハワード(フランクリン・バーチ)
ヴィオラ・デイヴィス(ナンシー・バーチ)
メリッサ・レオ(ホリー・ジョーンズ)
ポール・ダノ(アレックス・ジョーンズ)
ディラン・ミネット

解説:
前作「灼熱の魂」が高い評価を受けたカナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが、ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールを主演に迎えて贈る緊迫のクライム・サスペンス。アメリカの田舎町を舞台に、何者かに掠われた6歳の少女の捜索を巡って繰り広げられる、冷静沈着に捜査を進めていく刑事(ジェイク・ギレンホール)と、自らの手で一刻も早く我が子を見つけ出そうと暴走していく父親(ヒュー・ジャックマン)の対照的な姿をスリリングに描き出していく。共演はヴィオラ・デイヴィス、マリア・ベロ、テレンス・ハワード、メリッサ・レオ、ポール・ダノ。
(allcinema)
 
あらすじ:
ペンシルヴェニア州の田舎町で工務店を営むケラー。ある年の感謝祭の日、親しい隣人家族とお祝いをしている最中に、自宅に戻った幼い娘が隣人の娘と一緒に行方知れずになってしまう。捜査を担当した刑事ロキは誘拐の可能性を考え、不審なRV車の目撃情報を中心に調べ始める。RV車の運転手アレックスはすぐに見つかり逮捕するも、彼は10歳ほどの知能しかなく聴取は困難を極め、何も分からないまま釈放されてしまい ―


Prisoners_31大自然の中の小さな町で起きた少女行方不明事件。誘拐ではないかと考えられたこの事件の被害者は2人。近所に住む仲のいい2組の家族の小さな娘達だった。
 
こんなのどかな町で誘拐?と思いがちだが、それは間違っているらしい。ほんの数十メートル離れた自宅に戻るという娘に、父親ケラーは兄と一緒ならいいよ、と注意する。それはもちろん何かのアクシデントに対する気持ちからだろうが、そこには“子供の誘拐”という5文字も入っている。
アメリカでは年間80万人もの行方不明児童がいるとも言われているのだ。場所は人がごった返している都会だけには限らないのだろう。だからケラーからこの言葉が出た。
けれども、ケラーの娘アナと一緒にいたジョイは2人で自宅へ向かってしまった。
こういう事件というものは、ちょっとした隙を付いて起きるものなのだ。犯人は常にそれを探しているのだから。
 
Prisoners_39この感謝祭の日、近所に見慣れぬRV車(キャンピングカータイプ)が停まっていた。誰かが乗っているようでもあり、アナの高校生の兄が不審に思うのには充分だった。警察はすぐにこの車を手配、持ち主を探し始める。と、同時に大勢の人間による周辺の探索も始まる。
いつ見ても心が痛む、あの横並びになって山の中や草むらを探す様子。もちろんケラーとジョイの父親も参加している。気を失って倒れているだけの娘の姿が、日にちが経てば経つほど最悪の姿を想像してしまうようにもなるだろう。それでも首を振って無事を願い捜索する。母親は寝込んでしまっていた。
そんな時、RV車の運転手が逮捕される。
 
Prisoners_12アレックス・ジョーンズ
ボサボサの髪とメガネで顔を隠し、いつも下を向いている青年。身体は大人だが、知能は10歳程度。そんな彼が女の子2人を誰にも見られずに誘拐して車に乗せ、その後、車の証拠を全て消し去り、女の子を隠したままに出来るのか?それに彼は叔母と一緒に暮らしている。そんな事が可能なのだろうか?
担当刑事ロキのきつい尋問にも何も答えないアレックス。48時間はすぐに経ち、釈放される。その時、彼に掴みかかったケラーは彼のつぶやきを聞く。
「僕がいなくなって、あの子達は泣き出した・・・」
ケラーはアレックスが犯人だと確信する。
 
Prisoners_15刑事ロキ。
今まで扱った事件は全て解決してきた。けれども、この町でそんなに大きな事件があっただろうか。アナの母親に「あなたは全部解決してきたのよね?」と言われてふっと笑うところが印象的だ。母親もすぐに「ごめんなさい(追い詰めているんじゃないのよ)」と。皆、善人なのだ。
 
今回の捜査を指揮するのは彼1人だ。刑事、と言えば相棒と2人組と思っていたが、違う地域もあるみたい。もちろん大勢の人員が割かれるが、いつまでも皆を使えるわけじゃない。警察にも予算があるのだ。ケラーと上司に挟まれて、思うように動けないロキ。ごく普通の男ではあるけれど、解決するまでは事件の事が頭から離れず、次々と糸口を見つけていく。彼は有能だった。
 
アレックス釈放後、地域の性犯罪者をしらみつぶしに当たっていたロキはすぐに他の容疑者を見つける。もしかしたらこの事件には複数が関わっているのではないか。依然としてアレックスも容疑者から外せない。だが、確たる証拠も無く時間だけが過ぎていく。警察が一つ一つ証拠を探し、固めている頃、何の動きも無いように見えてイライラと焦っていたケラーは、ある思い切った行動に出る ―


土砂降りの雨がやがて雪に変わっていったように、それぞれが、それぞれの立場で頑なに、又は取り憑かれているようになっていく様子がリアルに描かれており引き込まれる。ほとんどの登場人物は善人であるがゆえ、娘を誘拐した者を、犯罪を犯した者を許せない。暴走したケラーは人の道を外れたとも言えるが、とても痛々しく見ていられない。
 
Prisoners_38本作は単なる少女誘拐事件だけに止まらず、闇に隠れた大きな犯罪をあぶり出す。それを為し得たのは、ただ一つの目的のために探し回り、取り憑かれたように捜査したケラーとロキだ。彼らは決して諦めない。“取り憑かれる”という事はそういうことだ。そして取り憑かれていたのは彼らだけでは無かった。ある者は自らの行いに囚われ、最後まで脱出出来なかった。しかし本当に脱出出来なくなってしまった者は他にいたのだ。
本当にアメリカでは年間80万人もの子供達が行方不明になっているのだろうか。とても信じられない