『グランドピアノ 狙われた黒鍵』(2013) - Grand Piano –

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イライジャ・ウッドっていうことだけで借りてみた。なんとなく『マニアック』的なものをを想像してたんだけど、やっぱり違ってた。普通のサスペンス・スリラーで、これなら『フォーン・ブース』の方がよっぽど面白い。悪役は今回もジョン・キューザック。

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■ グランドピアノ 狙われた黒鍵 - Grand Piano – ■
2013年/スペイン・アメリカ/91分
監督:エウヘニオ・ミラ
脚本:デイミアン・チャゼル
製作:アドリアン・ゲラ 他
製作総指揮:ヌリア・バルス 他
撮影:ウナクス・メンディア
音楽:ビクトル・レイェス
 
出演:
イライジャ・ウッド(トム・セルズニック)
ケリー・ビシェ(エマ・セルズニック)
ジョン・キューザック(スナイパー)
タムシン・エガートン
アレン・リーチ
ドン・マクマナス
アレックス・ウィンター
ディー・ウォーレス

解説:
「[リミット]」のロドリゴ・コルテスが製作を務め、イライジャ・ウッドが演奏中に何者かに命を狙われる天才ピアニストを演じるスペイン・アメリカ合作のシチュエーション・スリラー。共演はジョン・キューザック。監督は、本作に登場する『ラ・シンケッテ』の作曲も手がけるなど音楽家としても活躍し、これが長編3作目となるエウヘニオ・ミラ。

 
あらすじ:
若き天才ピアニストのトム・セルズニック。あるトラウマを乗り越え、恩師パトリック・ゴーダルーの追悼コンサートで5年ぶりのステージに立つことに。そこに用意されていたのは、恩師が遺した最高級のグランドピアノ。ところが、トムは演奏を始めると、譜面に書かれた“1音でも間違えるとお前を殺す”という謎のメッセージに気づく。しかもそれは冗談などではなく、姿なきスナイパーの照準はしっかりとトムを捉えていた。動揺しながらも演奏を続け、やがて犯人に命じられるまま『ラ・シンケッテ』に挑むトム。しかしその曲は、パトリックとトム以外に演奏できる者はいないと言われ、彼のトラウマの原因ともなった難曲中の難曲だった ―

(allcinema)


恩師の超難曲「ラ・シンケッテ」の演奏でミスしたことから、しばらく引きこもっていた天才ピアニスト、トムが、彼の才能を信じる妻の計らいで5年ぶりのコンサートを引き受ける。それもこのコンサートは昨年亡くなった恩師の追悼コンサート。予定曲に「ラ・シンケッテ」は入っていなかったが、気が重いのには違いない。

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オープニングは恩師である世界的天才音楽家パトリック・ゴーダルの遺品であるグランドピアノの運び出しの場面。彼のお屋敷なのか大きな建物から作業員が運び出す様子が映る。「ここ、気持ち悪いんだよな」と遺品が多く遺された屋敷内で呟く作業員。ピアノが当たって落ちた小さな写真立てにはゴーダルとトムが写る写真が。
埃っぽく暗い大きな部屋。格式のある古いグランドピアノ。落ちる写真。
これからイヤな事が起きそうな不気味な雰囲気。とてもいいオープニングだ。
 
Grand_Piano_21その後、コンサート会場のあるシカゴに向かう機内のトムが。古いクラシックな感じから現代へ。この感じは『キャット・ピープル』のオープニングに似ている。
トムは今回のコンサートを受けて、久し振りに舞台に立てる喜びと、5年前の失敗のトラウマの中で複雑な心境だが、愛する妻エマの計らいには感謝している様子ではある。それに彼は天才ピアニストであることには変わりなく、プロなのだ。迎えの車で真っ直ぐ会場に向かい、慣れた足取りで楽屋に入る。所狭しと物が並べられた部屋や狭い廊下を歩いて行く彼。カメラは彼の背中を追って、向こうから来る人を一緒に避ける。
 
コンサートが始まり、トムの名が呼ばれる。
空港や楽屋では小さく見えたトム(もといイライジャ)。だがピアノの前に座った彼は、グランドピアノと一体となったかのようだ。
演奏が始まる。
 
ここ前半まではプロの音楽家の孤独と苦悩、トム個人の善良さ、妻を大事にする気持ちがとてもよく描写されていて引き込まれる。ピアノを弾くトムの手元もよく映され、その指の動きの速さに驚嘆する。
Grand_Piano_17けれども肝心の、事件が起きる後半は、前半に感じたいつ何が起きるのか?どうなるのか?といった緊張感が一気に溶けてしまった。ここから始まるというのに。
 
楽譜に書き込まれていた“1音でも間違えるとお前を殺す”というような文言は何カ所にも渡って書かれており、一体いつ、誰が?となるところで犯人側の一人がまず分かってしまう。小物らしいことから、裏で糸引く黒幕がいることも分かる。
オーケストラが演奏中、ピアニストがピアノを離れる場面ではビックリしたし、演奏中にイヤホンマイクで犯人とやり取りしスマホさえ使うという離れ業はサスペンスを盛り上げるところなのだろうが、なんだろう、この白けた感じは。
天才ピアニストだから話しながらも演奏出来るのかもしれないが、正直、がっかりした。トムはプロのはずなのに。と言えども、犯人の要求「ラ・シンケッテ」を完璧に演奏すること、1音でも間違えば妻を殺すと脅されれば仕方ないのだろうが。
 
Grand_Piano_18犯人は声からしてジョン・キューザックなんですけども、この声だけしか聞こえず顔の見えない、正体と目的が分からない恐怖というのは『フォーン・ブース』が秀逸だっただけに、ジョン・キューザックだと分かった段階でこちらの緊張感が無くなってしまった(フォーン・ブースは最後まで犯人の正体が分からなかったからねー)。
それに結構すぐに目的が判明、顔も出すし。
 
ここからの展開も合わせて、犯人・スナイパーの目的も、彼自身にも、割と呆気ないラストにさえも深みが無い。全体的にクラシックなヒッチコック風に仕上げている物の、ヒッチコック作品に感じられるようなハラハラ感はあまり感じられなかった。最後も想像できる範囲で前半のトムに裏切られた気分。
 
やっぱりアレかなー。“スマホ”が映画から情緒を無くしたのかなー