『パッション』(2012) - Passion –

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公私ともに欲しい物は全てを手に入れる野心家の美女と、その下で働く広告クリエイター女性との愛憎入り交じるサスペンス劇。部下のイザベルが仕事が出来るだけに、2人の関係は○と△と×が入り乱れ、愛憎物語に見せかけたまったりした前半と、息をもつかせぬ後半の怒濤の展開がデ・パルマらしい演出。思わず以前観た同監督のサイコホラー映画『悪魔のシスター』を思い出した。
 

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■パッション - Passion -■
2012年/フランス・ドイツ/101分
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ
製作:サイド・ベン・サイド
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽:ピノ・ドナッジオ


出演:
レイチェル・マクアダムス(クリスティーン)
ノオミ・ラパス(イザベル)
カロリーネ・ヘルフルト(ダニ)
ポール・アンダーソン(ダーク)
ライナー・ボック(バッハ刑事)
ベンヤミン・サドラー(検察官)
ミヒャエル・ロチョフ
マックス・ウルラヒャー
ドミニク・ラーケ

解説:
リュディヴィーヌ・サニエとクリスティン・スコット・トーマスが共演し、監督を務めたアラン・コルノーの遺作ともなった2010年のフレンチ・スリラー「ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて」を、「ブラック・ダリア」「リダクテッド 真実の価値」のブライアン・デ・パルマ監督がリメイクした官能クライム・サスペンス。主演は「きみに読む物語」のレイチェル・マクアダムスと「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のノオミ・ラパス。大手広告会社で働く女性社員が、自分を陥れた悪辣な女性上司に対して仕掛ける壮絶な復讐劇を描く。
 
あらすじ:
狡猾で野心にあふれたクリスティーンは、ニューヨークに本社を持つ世界的広告会社のベルリン支社で働く女性エグゼクティヴ。その優秀な部下イザベルは、新規の案件で斬新なアイデアをひねり出し、クリスティーンから任されたロンドンでのプレゼンを成功に導く。ところがクリスティーンはその手柄を横取りし、ニューヨーク本社への復帰を勝ち取ってしまう。その後もクリスティーンの心ない仕打ちに苦しめられ続けるイザベルだったが ―

(allcinema)


これを観て思い出した『悪魔のシスター』は『サイコ』にも似た完全なサイコ・ホラーだったが、こちらの登場人物はある意味よくいるタイプの女性達。
 
Passion_14イザベルはアイデアに富む(普通に)向上心のある広告クリエイター。自分が正直だからか、基本的には人の善良さを信じている。信頼のおける部下ダニにも恵まれて、毎日仕事に打ち込み忙しいが、恋愛することも忘れない、充実した日々を送る女性。
イザベルの上司クリスティーンは若くでエグゼクティヴの地位を手に入れた野心家。素晴らしく美しい容姿を持つが、欲しい物は全て手にせずにはいられない。そのために利用できるものは全てを利用。悪びれもせず、踏み台にされた者にそうと気付かせない魅力と手腕さえ持っている。要するに意地悪で陰険な自己中女である。
 
Passion_17前半は、この2人の本当の姿は見えない。
クリスティーンの言動は悲しい過去と両親に愛されなかった経験からのように説明される。そんな彼女の言い分を正直に信じて、彼女に利用されているかのように見えるイザベルだが、2人は惹かれあい、愛し合っているのだからいいのかな、と思わせる演出が続く。
その2人に絡む同僚ダークとダニ。この2人もそれぞれクリスティーンとイザベルに気がある存在で、三角関係のような四角関係のような微妙なやり取りは、この作品が恋愛ものだと錯覚させるほど。
確かに、前半はそういう映画だと思っていた。
 
 
Passion_16が、後半。
イザベルの存在が出世の邪魔になると確信したクリスティーンが、本来のイヤらしさを全開に、それもこっそりと卑怯な手段で行動し始めた頃から、この映画はサスペンス性を帯びてくる。
登場人物の立ち位置による微妙な掛け合いから引き起こされる、ある犯罪 ・・・ 一つの殺人事件が起きる。
動機を持つ者は多く、簡単には犯人を絞れない。けれどもヒントはたくさん散りばめられていて、きっと「あの人だろうな」とは分かるようにはなっている。
 
Passion_15主な登場人物4人が4人とも裏の顔を持ち、それを上手に隠しているが、これはデ・パルマ作品。いきなり現れる『悪魔のシスター』でも使われた画面2分割は、その仮面を剥ぎ、静と動=真実と現実を見せるように進められ、かつ観ている者にドキドキさせることに成功している。ホント、いきなり挟まりますからね
 
うまくいったかのような完全犯罪は、やがて信頼関係にひびが入った時に瓦解、真犯人が表面化する。
 
Passion_20だが、後半は精神的にダメージを受けたイザベルが薬を服用する事で、現実なのか夢なのか分からないように描かれる部分が入り、前半に比べて説明も不親切。
真犯人が分かったところで、この人物自体も罪の意識からなのか、悪夢のような妄想が入り、一体、どの部分が真実なのか?と混乱させられる。単純に白と黒、加害者と被害者に分けられるようなラストでも無く、時系列も崩されている。
これらを、どちらも身体の一部を隠すことになる仮面やスカーフといった小道具を使って、犯人を捜し、かつ追い詰めていくところが面白い。
 
最後にこれだけは言える。真犯人はきっと報いを受けに違いない。