『スモールタウン マーダー ソングズ』(2010) - Small Town Murder Songs –

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こんな真面目な、サイコでも変人でも悪人でも無いピーター・ストーメアを始めて見たよ。彼は殺人事件を捜査する警察署長だけれど、犯人を追い詰めていく刑事物の内容ではなくて、彼が抱える自身の問題をどうやって乗り越えていくかに焦点が当てられている。小さな作品ながら信仰に救いを求めたある男の苦悩を描く、重厚な感じのする映画。
 

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■スモールタウン マーダー ソングズ - Small Town Murder Songs -■
2010年/カナダ/75分
監督:エド・ガス=ドネリー
脚本:エド・ガス=ドネリー
製作:エド・ガス=ドネリー 他
撮影:ブレンダン・スティーシー
音楽:ブルース・ペニンスラ

出演:
ピーター・ストーメア(ウォルター署長)
アーロン・プール
マーサ・プリンプトン
ジル・ヘネシー
 

解説:
血も暴力シーンも登場せず、圧倒的な緊迫感が支配するクライムサスペンス。
(キネマ旬報社)

あらすじ:
カナダの小さな町で女性の遺体が発見され、殺人と断定される。地元の警察署長であるウォルターは州警察の助けを借りて捜査に入るが、遺体発見の第一通報者がウォルターの元恋人リタであることが分かり ―


冒頭、警察の制服を着たウォルターが呆然とした様子で立っている映像が映る。到着したばかりのパトカーのライトが当たりを照らし、それらを呆然と眺める女性の姿も。
何が原因かは説明されないが、ウォルターが勤務中に怒りにまかせて人を殴っている映像が何度も出てくる。これさえ無ければ暴力とは無縁の温厚な男に見える彼だが、実は短期で切れやすく、すぐに暴力を振るってしまう人物だったと分かる。
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だが彼はそんな自分を嫌悪し、今まで持っていなかった信仰にすがって自らの暴力性を克服しようと努力する。
「悔い改め、信仰を宣誓せよ」
彼の心情を追って、画面には聖書の教えが大きく映し出される。宗教色の強い作品のようにみえるが、そんなに難しくはなくて、自分のような者にも分かりやすいから、あまり気にならない。
 
Small_Town_Murder_Songs_11そして発見される女性の他殺体。
遺体発見の通報者の声から、元恋人リタだと分かったウォルターは彼女の家へ話を聞きに。そこに一緒に出てきたのがリタの現恋人でチンピラ男ヘイデン。ウォルターがリタの元恋人と知った上で、昔の暴力沙汰の話でウォルターを挑発するヘイデン。
「世間に振り回されてはならない」
「右の頬を殴られたら左の頬を出しなさい」

 
ここからは州警察と合同で捜査を進めていくが、あくまでもカメラはウォルターの表情を追っていく。ヘイデンの挑発に乗らずに自制した彼の顔。聞き込みに寄った家で老女の昔話を聞く彼の顔。うまくいっていない父親との噛み合わない会話の後に下を向く彼の顔。そんな彼を見守っているのは、妻だけではなく、部下のジムも彼の心の動きを注意深く見ている。
そして怪しい人物を突き止めた彼が取った行動は、犯人を追い詰めるためだったのか、克服するのが難しい暴力性のためなのか―
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「神はどんな自分にも会いに来てくださる」
 
解説通り、派手なシーンは全く無いにも関わらず、出演者達の物言わぬシーンがとても秀逸。ちょっとふっくらしたピーター・ストーメアの演技もそうだが、容疑者がパトカーで最後に見せる表情の移り変わりも、台詞が手に取るようだった。綺麗な景色が映り全体がゆっくりしていながらも時折入る音楽が鮮烈で、風変わりな印象も残す。
信仰心が無くても気負わず観られる作品。
 
 
 
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