『人肉レストラン』(2013) - Omnívoros –

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扇情的でアブノーマル、ダイレクトな邦題が付いたこの映画は、そのタイトルとは裏腹に、静かでクラシックな雰囲気を醸し出しながら進められる。グロ描写は(比較的)少なくて、“人肉”を食べている描写もあまり気にならない。ホラーというよりもサスペンス寄りで、ストーリーもカニバリズムに頼らず純粋に面白かった。どんな層が対象になるか分からないけど、オススメ
 

Omnívoros_movie2013
■人肉レストラン - Omnívoros -■
2013年/スペイン/85分
監督:オスカル・ロホ
脚本:オスカル・ロホ
撮影:ノノ・ムニョス
音楽:ルシア・ロホ
出演:
マリオ・デ・ラ・ロサ

パコ・マンサネド
フェルナンド・アルビス
マルタ・フリッチ
サラ・ゴメス
 
解説:
オスカル・ロホ監督によるスペイン産ショッキングホラー。
(TSUTAYA)
 
あらすじ:
「秘密のレストラン」特集の執筆依頼を受けた料理評論家マルコス・ベラ。早速、事情通の手を借りて各所でひっそりと秘密裏に経営されているレストランを回り始める。世界の珍味などを扱う店を回るうち、彼は“人肉”を扱うレストランの存在を知ってしまい ―

英題:omnivores


Omnívoros_02初っ端、オープニング・クレジットの後ろに映る、自然をモチーフにした絵なのか壁画なのか、、それがすごく美しく、同時に怖くて目を見張ってしまった。題材は動物や植物、昆虫、鳥などで、全体的に色は濃く暗く、写実的では無くてどこか幾何学模様のように描かれている。
この最初の雰囲気が気に入れば、この作品も気に入るんじゃないかなー。ちなみにエンド・クレジットでは、もっと色濃く暗くなり、題材は“人体”になっているように見える。要するに、人間も自然の一部なんだということ。
(原題の意味は「雑食性動物」)
 
 
で、始まるのは数十年前に起きたこと。
病気で死んだ母親の亡骸を前に、食べ物がなくてお腹をすかせた少年が一人。それから何日経ったのか、知り合いが訪ねてきてぎょっとする。切り取られ囓られた跡のある腐乱死体と口元が血だらけの少年ディマス。
 
Omnívoros_31で、時は過ぎ、現在。
観ている者は、あの少年がコトを起こすのだろうと知っているから、誰があの子か、ディマスはこの人か?と気になってしょうがないけど、なかなか登場しない。
 
代わりに登場する主人公は料理評論家マルコス。
彼が受けた今度の仕事は「秘密のレストラン」巡り。知っている人しか知らない“隠れ家”的な人気店というよりも、もっとダークで普通は口にしないような世界の珍味を扱うレストランの取材と点付け。このような店は大々的に店をオープンしているわけでなく、ホストが開くサロンみたいな形で、ごく少数の選ばれた人達が寄付金という名の食事代を持って集う、プライベートなディナー会になっている。
 
Omnívoros_21編集者に教えられ、最初に行った店でのメニューは「マツタケと神戸牛」。日本人にとっては「え?」となる(と言ってもマツタケは最近食べてないし、神戸牛はきっと食べたことが無い私・・)けど、スペインの人にとっては高価で珍しいJapanese Foodsなんでしょう。
次に訪れたのは「フグ」を食べさせる店。最初に奇妙な寸劇まで付いて、フグの毒を除くためには免許がいると紹介される。どちらも職業意識の高いマルコスには、面白い素材ではない。
そうこうするうち、このような店で知り合った女性に耳打ちされる。
「人肉を出す店があるらしいわよ。」
 
 
Omnívoros_20さー、ここから始まりますわよー。
詳しいことは言えませんけどね、破格の代金を前払いした後に指示された待ち合わせ場所で車を待つ。その車も1度乗り換え、「ホントにいいんだな?ここから先は戻ることは出来ないぞ」と脅されて、目隠しされてようやく大邸宅に到着。
・本当に人肉なのか?
・何かの方法で手に入れた死体を使うのか?
・誰がいったいこんなことを?
疑問だらけのマルコスにホストの紳士ディマスが全て答える。ここが肉を捌いている現場ですよー、と鎖で吊るされた材料(この場合は人)まで見学させてくれる。
材料の調達、集客、送迎まで全てシステマティックに運営されているこのレストラン。マルコスは震えるほどの興味を持つが、ソレを食べることが出来るのか。だが、この集まりに参加した者は必ず食さなくてはならないのがルールで、自動的に“共犯者”にされる。
この時点でマルコスの持つ倫理観は分からない。けれど彼の表情を見ていれば―
(↓下はディマス)
 
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予告編だけだとなんか派手なスプラッター映画みたいに見えるけど、あの映画『私が、生きる肌』に雰囲気が似ている。とてもおぞましい事が進行しているわりに重厚な絵作りで静かに会話が進み、グロなシーンもあまり無い。主人公が内に秘める考えを隠されているのも同じで、心理的に不気味で気持ち悪くて不安になってくる。
この映画のラストも『私が、生きる肌』同様、とても爽快感は望めない。よく見てみて。ラストに登場する人物の不穏な感じを。