『悪の法則』(2013) - The Counselor –

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物事には始まりがあり終わりがある。行動には当然負うべき責任が伴う。その責任の取り方は各個別の社会や業界で決まっている。これは普通の弁護士だった男が慣れない犯罪に手を染めたばかりに、恐ろしい落とし前を否応も無く取らされるお話。単純な物語を複雑に台詞で見せるものだから分かりにくくはあるけれど、じわじわくる怖さを犯罪には素人の主人公と共に共有することが出来る。
 

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■悪の法則 – The Counselor -■
2013年/アメリカ/118分
監督:リドリー・スコット
脚本:コーマック・マッカーシー
製作:リドリー・スコット 他
製作総指揮:マイケル・コスティガン 他
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:ダニエル・ペンバートン

出演:
マイケル・ファスベンダー(カウンセラー)

ペネロペ・クルス(ローラ)
キャメロン・ディアス(マルキナ)
ハビエル・バルデム(ライナー)
ブラッド・ピット(ウェストリー)
ブルーノ・ガンツ(宝石商)
ルーベン・ブラデス(メキシコの有力者)
ロージー・ペレス(ルース)
リチャード・カブラル(バイカー)
ジョン・レグイザモ(ランディ)

解説:
「ノーカントリー」「ザ・ロード」の原作者でもあり、本作で初の映画脚本に挑戦したピュリッツアー賞作家コーマック・マッカーシーと巨匠リドリー・スコット監督の夢のコラボで贈るクライム・サスペンス。自らの才能を過信するやり手弁護士が、やがて麻薬取引を巡る危険な罠に呑み込まれていくさまを豪華キャストの競演で描き出す。出演はマイケル・ファスベンダー、ブラッド・ピット、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム。 (allcinema)
 
あらすじ:
敏腕弁護士カウンセラーは美しい恋人ローラとの結婚を決意したのを機に、さらに金儲けしようとドラッグビジネスに手を染める。だが、最初の仕事でトラブルが起き、とんでもない事態に巻き込まれ ―


表の世界でぴかぴか光っていた弁護士が、裏の世界でも金儲けしたくなる、欲と誘惑。
でも金儲けしたくなった事が必ずしもうまくいくとは限らず、一般人には分からない、暗い闇の奥から覗く何者かを知った時にはもう遅い。彼はこんな事に関わるべきでは無かった。特に「人」を介さなくては進行しない、自分一人でコントロール出来ないような場合には。
 
The_Counselor_27話は簡単。常識人であった弁護士が知り合いの知り合いを介してドラッグ密輸に金を出す。その金が巡り巡って大きく増えるはずだったのに、途中で別の組織が強奪したことから、新人の弁護士が疑われ組織に酷い目に遭わされるというお話。
知り合いからは裏切り者の処刑方法を聞いたり、知り合いの知り合いである麻薬ビジネスのブローカーからも、とても危険だと釘を刺されていた。
どちらの恐ろしい話も映画の世界のようで彼にとっては現実味が無い。彼が見ていたものは出した金が大きく増えるということだけだった。そんなに簡単な甘い話は無いというのに。
 
The_Counselor_16裏の世界の話だけに怪しい人物がたくさん出てくる。というか弁護士と恋人ローラ以外は全員怪しい。
麻薬ビジネスは“ビジネス”というだけあって、大変多くの人が関わっていて、全体を把握する者はごく一部であり、関わっていながら自分の請け負っている事以外、関係人物も知らないのが普通。その中の駒の一つ、根元に近ければ近いほど大金が入る。が、その分リスクも高い。
大勢が関わる中で、違法なドラッグが製造され、運ばれ、売りさばかれる。これとは逆の手順で現金は元の場所に戻っていく。途中、途中には人と金を紹介するだけで金になるブローカー(この映画ではウェストリー)がいたりして、事はさらに複雑になり、警察の手は大元のカルテルまでなかなか届かない。
 
The_Counselor_13この動きを上から見た時に、これらの流れを途中でぶった切り、ブツや現金をかっさらおうと考える者も出てくる。それは簡単な事ではないのも承知で、カルテルに特定されれば命は無い。そこでその罪を押しつける都合のいい人物が登場するのを時間をかけて待つ。待って、待って、上手い具合に現れたのが弁護士だったのである。
弁護士はブツそのものはおろか、自分が手を貸している事になる相手さえ見ないまま、何度かの相談でやることを決意した時には既に罠に落ちていた。上の動きと平行して動き出した強奪の車輪。弁護士はこの車輪に踏みつぶされていく。
 
 
The_Counselor_22本作の特徴は、上記のような恐ろしいことが起きているのを綺麗な流れでバイオレンス一杯に見せるのでは無く、分断された麻薬ビジネスの個々の場面で、カルテル側と強奪組、弁護士と関連人物に分けて見せていくから流れが掴みにくい。その上、台詞はあくまで静かに、それでいてほとんどの登場人物は腹黒くて何を考えているのか分からない、というサスペンスなおまけ付き。
原題の『The Counselor』は“弁護士”という意味よりもその言葉通り“相談役”という意味合いの方が強い。通常、相談する相手は信頼のおける人物だ。本作の主人公である弁護士が相談した相手は信用がおける相手であったのかもしれない。麻薬ビジネスそのものも、ある意味信頼出来る確固としたシステムなのかもしれない。だが弁護士は忘れていた。それら信頼が金で買われているものだということを。自分の仕事もそうであるはずなのに。