『変態島』(2008) - Vinyan –

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ぅぁあーー、これは何だー 前半は息子を捜しに行ったものの、簡単には見つからず苦しむ夫婦の姿。後半はミャンマーの辺境の地でどんどん都会性が失われ自然と同化していく妻。そして驚愕のラストに繋がっていく。観終わった後、「何じゃ、こりゃー!」とジーパン刑事のように叫ぶこと間違いない、エロ性はほとんど期待できない不思議系映画。“変態”とは“ヘンタイ”じゃなくて、“ヘンシーン”みたいな意味なのか、、な・・?
 

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■変態島 – Vinyan -■
2008年/フランス・ベルギー・イギリス・オーストラリア/96分
監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
脚本:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ 他
製作:ミカエル・ジェンティル
製作総指揮:ジェレミー・バーデク 他
撮影:ブノワ・デビエ
音楽:フランソワ=ウード・シャンフロー

出演:
エマニュエル・ベアール(ジャンヌ・ベルマー)

ルーファス・シーウェル(ポール・ベルマー)
ペッチ・オササヌグラ(タクシン・ガオ)
ジュリー・ドレフュス(キム)
アンポン・パンクラトク(ソンチャイ)

解説:
2008年ヴェネツィア国際映画祭特別招待作品。「変態村」の監督ファブリス・ドゥ・ヴェルツが、ジャングルの奥地で息子探しに執着する余り、狂気と惨劇に巻き込まれて行く夫婦の様を描いた禁断の変態エロティック・サイコ・スリラー。フランスを代表する世界的演技派女優として活躍を続けるエマニュエル・ベアールが、アラフォーになっても変わらぬ美貌と未だ健在の裸体も大胆披露する。 (Oricon)
 
あらすじ:
半年前に津波にさらわれ幼い息子を亡くしたジャンヌとポールは、そのままタイのプーケット島に滞在していた。ある日、ミャンマーの辺境地域を映した慈善用ビデオに息子らしい姿を見つけたジャンヌは息子は生きていると確信。夫ポールを説得して現地に探しに行くことにするが ―

Vinyan :タイ語「魂、成仏できない霊、幽霊」


これは「女vs男」、さらに突き詰めて「母なる自然vsその他」の作品なんです。
Vinyan_24ミャンマーの貧しい地域を映した粗い画像のビデオに小さく映る幼い子供の後ろ姿。「だってあの子と同じ赤いシャツを着てるじゃないっ」と叫ぶ母親。その不鮮明な映像に誰が見ても「どうだろうねぇ」、父親でさえ「赤いシャツを着てる子供なんて他にもたくさん」と思わず呟いてしまう。
愛する息子が津波にさらわれて行方不明のまま、という状態を「もしかしたら生きているかもしれない」事に結びつけたい。胸が痛くなりますが、ここは人身売買が公然と囁かれているタイ。母親は助かった息子が売られてしまったと考えた。白人の子供は高く“売れる”―
 
でも、よくよく考えると高く買われた白人の子供が、ミャンマーの電気もガスも無いような小さな島にいるはずが無い。普通ならヘンタイ趣味のある金持ちが買うか、人が多く集まる場所でヘンタイな商売をしている悪い奴が買っているはず。
Vinyan_28が、息子を取り戻したい一心の母親には判断力が欠けている。父親だって“もしかしたら、、”と思ってしまう。人身売買のブローカーと言われるタクシン・ガオを捜すため、2人はタイのアンダーグラウンドをさまよう。これが普通の状態なら決して足を踏み入れない、繁華街から外れた裏の裏で怖い場所。この映画で一番怖いシーンかもしれない。
ここから案内人と一緒にミャンマーに着くまで、両親が売られてしまうのではないか、殺されて身ぐるみ剥がされるのではないかとハラハラしてしまった。
 
ガオに大金を払い、ミャンマーの島々を息子を求めてさまよう夫婦。売られた子供は本当にこんな人里離れたところにいるのか?そもそもあのビデオに映っていたのは息子だったのか、息子は売られたのか、・・生きているのか?こうした中、父親はどんどん現実的に、対する母親はどんどん息子が生きていると盲信が酷くなる。
そしてある島に足を踏み入れた一行は、そこがとんでもない場所だと気付く。が、もう遅い。深いジャングルの中、命を狙う者に追われ、夫は逃げて助かることを、対する妻は自然と同化することを選ぶ―
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この映画の冒頭、水中の多数の泡が画面一杯に息づくようにゆらめき、次第に赤く変わっていく様子が奇妙な音と共に描かれる。執拗に長く続くそれは、ノイズのように流れる音がとても不安をあおり次第にいらだってくる。これらは水中で溺れる者の断末魔のように見える反面、母親の胎内から生まれ落ちる瞬間のようでもある。
Vinyan_12外国人が集う華やかなリゾート地からミャンマーの秘境に分け入っていくにつれ、少なくなっていく夫婦の会話。常に脱出を念頭に置いている夫と、土に還ったかもしれない息子の亡霊を探し続ける妻。
最後の島に住み着いていた悪鬼のような子供達は、とても生きているとは思えない。なんらかの理由で死んでしまった救われない子供達の魂が、あのような姿で現れたのではないだろうか。とすれば、2人はその世界に取り込まれたのか、死の寸前なのか。抵抗する夫は肉体を失い、妻は自然と一体となる。それは息子の肉体の死を受け入れたことに。
最後の妻の夫への言葉「あの子を解放して」とは、夫の中の息子、現実に存在した息子の記憶を解放し、この自然に渡せ、ということなのだろうか。