『7BOX セブンボックス』(2012) - 7 Cajas –

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「オラー♪」とか言ってるし南米の映画なんだろかと思っていたらパラグアイ映画ですよ、珍しい。内容はスラム街に広がる迷宮のような市場で、怪しい箱を運ぶ仕事を受けた少年がエラい目に遭うことになった一夜を描く。映画俳優になった自分を夢見る、最新型携帯が欲しいだけの少年が、仲間と機転と運を味方に付けて切り抜けていく様子はハラハラで爽快。と同時にあまり知られないパラグアイの厳しい現実も。
 

■7BOX セブンボックス – 7 Cajas -■
2012年/パラグアイ/105分
監督:フアン・カルロス・マネグリア、タナ・シェムボリ
脚本・原案:フアン・カルロス・マネグリア
製作総指揮:マリア・ビクトリア・ラミレス・ホウ
撮影:リチャルド・カレアガ
音楽:フラン・ビジャルバ

出演:
セルソ・フランコ
ビクトル・ソサ
ラリ・ゴンザレス
ニコ・ガルシア
マヌエル・ポーティロ

解説:
サン・セバスチャン国際映画祭ユース賞受賞を始めとして、スペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞、トロント映画祭などの主要映画祭を席巻した話題作。パラグアイのスラムを舞台に、謎の箱を運ぶ少年の逃亡劇を描く。撮影は実際のスラム街で行われ、エキストラも地元民を使うなどリアリティを徹底した臨場感あふれる珠玉のエンターテイメント作品。 (allcinema)

あらすじ:
パラグアイのスラム街に広がる市場メルカド・クワトロ。ここで手押し車を使って荷物を運び生活費を稼いでいる少年ビクトル。ある日、破格の料金で中身の分からない7つの木箱運びを頼まれ、不審に思いながらも受けた彼。早速、荷車に乗せて運び始めたが、仕事を奪われた商売敵、中身を確認しようとする警察などに箱を狙われ、簡単な仕事のはずが命を狙われる恐怖の夜になり ―

英題:7 Boxes


7つの木箱に分けて詰められた“何か”。
これをA地点からB地点に運ぶだけの簡単なお仕事であったはずなのに、この木箱を巡って色々なグループが少年ビクトルの邪魔をする。ビクトルは100ドルという破格の運び賃でこれを受け、撮影機能が付いた最新の携帯が欲しかっただけ。なぜ欲しかったのか。それは日頃から映画俳優となってテレビに映る自分を夢想していたから。

パラグアイ首都アスンシオン。ここの下町に広がる市場メルカド・クワトロは、屋台がびっしりと軒を連ねてまるで迷宮のようになっている。この迷宮を自前の荷車を押して縦横無尽に駆け抜ける荷物の運び屋は多数いて、生活がかかっていることもありお互いが商売敵だ。
この日、ビクトルはたまたま精肉店の男からこの胡散臭い仕事を受けることになった。

Contents

A地点・精肉屋

予定していた運び屋が来ず、急遽ビクトルに頼んだ7つの木箱。それほどに急いで運ばなくてはならない物は何なのか。
見て下さい、この面々。慌てふためき荷物を店から運び出す。ビクトルの出発と入れ替わりに警官達ががさ入れに。元々、警察に目を付けられている怪しい精肉屋。ありがちな中身は、金か麻薬か。
100ドルもの運び賃と引き替えに、絶対中を見ず、必ず届ける事を指示されたビクトルも不信感がいっぱい。でもこれで携帯を手に入れることが出来る。

商売敵・ネルソン

息子のための高い薬代を稼ぐため受けた仕事がビクトルへ。
日頃から商売敵のこの少年を逆恨みしたネルソン(中央)は、中身を大金だとふんでビクトルを追って荷物を横取りしようとする。同じく商売敵の他の運び屋を、入ってくるだろう金で雇って団体でビクトル捜し。中には銃を持っている悪い奴もいたりして、事態は面倒くさいことに。
あたりを騒動に巻き込みながらも、決して手から離さない大事な商売道具の荷車を押しているところは笑うところ。

警察官

仕事中に女を口説いたり、屋台で飲食したりするけど、きちんと代金は払う案外真面目な警察官達。
精肉店を調べた後、市場に繰り出し怪しそうな荷物を調べる。ビクトルの荷物にも何かを感じ取り、蓋を開けようと試みるが―

パラグアイは経済的に不平等で貧しい国家であり、約4割の国民が貧困に喘いでいると見積もられている。農村部では41.2%が、都市部では27.6%が最低限の基本的なニーズを満たすための収入を得ることが出来ない。上位10%の人間が国富の43%を牛耳るが、下位10%の人間はわずかに0.5%にすぎない。(Wiki:パラグアイ)

貧しい国ではあるけれど治安は比較的悪くはなく、本作での警官は職務に忠実で腐敗とは縁が無いように描かれている。フィリピン映画『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』の警官とは違っており、少し驚いた。

精肉屋の中でも問題が持ち上がって箱を戻すよう指示されたりして右往左往するビクトル。それを執拗に狙う商売敵ネルソン部隊。その上、警官に目を付けられ、泥棒に箱を一つ盗まれたりと、新しいグループが出てくる度に次々と困難な目に遭っていくビクトル。同時にビクトルの姉と彼女の仕事仲間の出産までもが絡んできて、話はますます複雑に。


最後、一同が回する場面はそれらの集大成とも言える緊迫したシーンとなり大団円を迎える。
さて、ビクトルは無事に箱を届ける事が出来たのでしょうか。それに彼の夢の携帯とテレビ出演は・・?
それと箱の中身は何だったと思います?ホント想定外ですよ、途中で分かるんだけどね

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • やばい犯罪に巻き込まれながらも、携帯とテレビ出演を夢見る少年。けれども動きが機敏で、仲間の助けを借りながら大人達を手玉に取る様子がホントに面白かったです。市場の昼と夜の描写も良かったですよね。
    確かに心底悪い奴はほとんど出てこなくて、肉屋の人もですが、運び屋軍団の銃の人。撃つたんびに事態を悪化させるところは笑ってしまいました。ホントに悪い奴は最後のあの人だけでしたねー。
     
    >高橋留美子のデビュー短編「勝手なやつら」
    あー、、、読んでないです(-.-) でもこんな映画と共通するものがあるなんて、さすが高橋留美子さんですねー。そう言えば「めぞん一刻」みたいな雰囲気もありますよね、この映画には(半ばこじつけ^^;)。

  • こんにちはー。
     
    夕べ夜中に見てみました。けっこう遅い時間でしたけど最後まで見ちゃいましたよ(^_^;) 
    これはなかなか面白かったですね。
     
    誰も彼もがとことん憎めないキャラだったのもよかったなと思ったんですが(携帯カツアゲした不良との電話のやりとり場面とか妙に和んだなー(ーー;))基本この作品世界では根は悪い人あんまり居ないんじゃないかと思いました(場面場面じゃ酷いこといっぱいしてるんだけど( ̄。 ̄;)本気で感じ悪かったのは飲食店のボスくらいでしょうか)
     
    それとスラム街の市場内をこれでもかとカメラが追いかけてくるスピード感も凄くあったし、これはアタリの映画引いたなと思います。
     
    momorexさんのレビュー読んで自分が録画してるの思い出せて良かったです、ありがとうございました<(_ _)>
     
    あとこの映画終わりでなんとなく思い出したのは高橋留美子のデビュー短編「勝手なやつら」と少しだけイメージが被るなあというのも感じています(雰囲気だけほんの少しですけど)

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