『人魚伝説』(1984/日本)

あー、、こんな映画だったなんて知らなかったー。人魚が出てくるファンタジーものかと思ってた。これは、夫を理不尽な理由で殺された海女の女性が、鬼と化し復讐する物語。古い映画というのもあるけれど、童話「赤い蝋燭と人魚」を思い出してしまった。
 

人魚伝説_movie1984
■ 人魚伝説 ■ 1984年/日本/110分
監督:池田敏春
脚本:西村琢也
原作:宮谷一彦「人魚伝説」
製作:佐々木史朗、宮坂進
撮影:前田米造
水中撮影:中村征夫
音楽:本田俊之

出演:
白都真理(佐伯みぎわ)
江藤 潤(佐伯啓介)
清水健太郎(宮本祥平)
青木義朗(宮本輝正)
神田 隆(花岡)
宮下順子(夏子)
宮口精二(辰男)
清水 宏(殺し屋)

解説:
宮谷一彦原作の同名劇画をもとに、西岡琢也が脚色し池田敏春が監督した復讐譚。主演の白都真理が体当たりの熱演を見せた。壮絶なバイオレンスシーンから一転、ラストの美しい水中撮影が余韻を残す。(allcinema)
 
あらすじ:
アワビを採って生活しているみぎわと啓介夫婦。ある夜、啓介は漁師仲間が海上で殺される現場を目撃、みぎわに相談する。そこで沈んでいるはずの遺体を確かめるためにみぎわが海に潜るが、海上で命綱を持っているはずの夫が殺されて海中へ。続いて犯人は海中のみぎわにも水中銃を撃ち、怪我を負ったみぎわは意識を失うが ―


人魚伝説_20海辺の小さな漁村で、アワビを採って生計を立てている若い夫婦。飲んべえの旦那ではあるが、しっかり者の奥さんが支え、口喧嘩は堪えないものの愛し合っている二人。ぐでんぐでんで帰って来た夫啓介が妻みぎわに「もし俺が死んだらどうする?」と問いかけると、みぎわは「酒を飲まない人と結婚するわ」と答え、「じゃあ、あたしが死んだらどうする?」と。啓介は「俺も後を追う」。・・くぅ~、泣かせるー
 
昭和の終わりに作られたこの作品は、貧しい漁村が舞台であることもあって、何かとても懐かしい感じが画面から漂ってくる。特にみぎわが海に潜る時、バックには独特の優しい音楽が流れて神秘的なものを感じる。
「あまちゃん」を見ていなかったのでよく知らなかったんだけど、海女さんは身体に命綱を巻き、重りを持って真っ直ぐ海底へ潜っていく。潜る間際に「ヒュッ」と喉笛のような音が鳴るのは、独特の空気の吸い方なのかな。
人魚伝説_17息が続く限り獲物を採った後、綱を何度か引くと、その先に待機している船上の夫が綱を巻き上げ、海女さんはスピードに乗って海上へ。夫婦の呼吸と信頼に成り立っているんだなー、と。
 
こんな毎日を送るこの夫婦に悲劇が起きる。
ある夜、漁をしていた啓介が、漁師仲間が船上で殺されるところを目撃してしまったのだ。酔っ払って夢でも見ていたんじゃないの?と言っていたみぎわだったが、あまりに啓介が何度も訴えるから、じゃあ、あたしが潜って確かめてやるよ、と。で、潜ってはみたものの何も見つからない。あきらめて綱を引こうと上を見たみぎわが見たもの。それは、ゆっくり落ちてくる夫の身体。綱が巻き付けられ、銛が撃ち込まれてふわふわと漂いながら落ちてくる。
人魚伝説_25この悲劇のシーンも何故かとても美しい。思い出したのが『ボーン・スプレマシー』のマリー死亡のシーン。水の中で髪を漂わせながら、ゆっくりと消えていく大事な人。ボーンもそうだったように、みぎわにも悲しむ暇は無かった。水中銃が自分に向けて撃ち込まれてきたからだ。折しも嵐が来ており、怪我を負ったみぎわは意識を失う。そして次に気が付いた時には、夫殺しとして警察から追われる身となっていた―

  

 
人魚伝説_30この後、みぎわは今までの平凡な生活から急転、身を落としながらも夫が殺された真実に近付いていく。その間、今まで存在も知らなかった人に助けられ、味方だと思っていた者に裏切られて傷付くがへこたれない。そして復讐する相手がすぐ目の前に現れた時、白い海女の衣装が赤く染まる。
以前は青い海と海女の白い衣装、夫の顔だけの世界だったのが、赤く黒い世界に。
このあたりの描写は、かなり大げさでまるで舞台劇でも見ているようだが、以外と自然に受け入れられる。また殺人の理由は、ちょうど今、都知事選で叫ばれている問題に絡むことだったりして、考えさせられるものがある。
 
鬼と化したみぎわが全て終わらせた後、また海へと帰っていく。そこには、以前のように笑顔の夫が船で待っていた。
 

赤い蝋燭と人魚
人魚伝説_37ある北の暗い海に身重の人魚が棲んでいた。人魚は辺りを見回して、あまりにも海が寂しいので子供が可愛そうだと考えた。人魚は人間が優しい心を持っていて、街は楽しい所だと聞いていたので、海辺の街の神社に行って、子供を産み落とすことに決める。
翌朝、人魚の捨て子は神社のそばの、ろうそく屋の老夫婦に拾われた。その子はとても大切に育てられ、美しい娘に成長する。人魚の娘が白いろうそくに赤い絵を描くと、たちまち評判となり、ろうそく屋は繁盛する。神社に納めたろうそくを灯して漁に出ると、時化でも無事に帰ってこられるということが分かり、ますます評判が広まった。
 
評判を聞きつけた行商人(香具師)が人魚に目をつけ、老夫婦に娘を売ってくれるように頼んだ。最初のうち老夫婦は娘を手放そうしなかったが、「昔から、人魚は、不吉なものとしてある。」という香具師の言葉と、法外な金を前にして手放すことになってしまう。娘は、自分が入れられる鉄の檻を見て、老夫婦の元を離れたくないと懇願するが、欲に目が眩んだ老夫婦は耳を貸さなかった。娘は真紅に染めたろうそくを残して、連れて行かれた。
 
その夜、老夫婦の元に、不気味な女が現れ、真紅のろうそくを買って行った。すると突然に海が荒れ狂い、沢山の船が転覆し、娘の乗った船も檻と共に沈んでしまう。それからというもの、神社に灯がともると大時化が来て人が死ぬようになる。老夫婦は神様の罰が当たったのだと考え、ろうそく屋を廃業する。
ろうそく屋がなくなっても、その呪いは収まらず、山の上の神社は恐れ嫌われて人が途絶え、数年後には街全体が滅びてしまう。