『スーサイド・ショップ』(2012) - Le magasin des suicides –

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去年のアカデミー賞か何かでノミネートされていたのかな?自殺が蔓延する街で繁盛する“自殺用品専門店”。じっとりと憂鬱な街並みに、目の下がクマだらけの登場人物達。容赦なく次々と死んでいく自殺者。こんな暗いアニメは観たことがない!あ、アレがあったか・・・「地獄少女」
 

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■スーサイド・ショップ – Le magasin des suicides -■
2012年/フランス・ベルギー・カナダ/79分
監督:パトリス・ルコント
脚本:パトリス・ルコント
原作:ジャン・トゥーレ「ようこそ、自殺用品専門店へ」
製作:アンドレ・ルロ 他
音楽:エティエンヌ・ペルション
声の出演:
ベルナール・アラヌ(ミシマ)
イザベル・スパッド(ルクレス)
ケイシー・モッテ・クライン(アラン)
イザベル・ジアニ(マリリン)
ロラン・ジャンドロン(ヴァンサン)

解説:
「仕立て屋の恋」「ぼくの大切なともだち」の名匠パトリス・ルコント監督が、ジャン・トゥーレのベストセラー『ようこそ、自殺用品専門店へ』を原作に、自身初のアニメ作品に挑んだファンタジー・コメディ。自殺用品を扱うネガティブ思考の一家に生まれた陽気な末っ子が、底抜けの明るさで周囲を巻き込み、世の中をポジティブに変えていく姿をブラック・ユーモア満載に綴る。(allcinema)
 
あらすじ:
不景気でどんどん自殺が増える、とある街。この街で唯一繁盛している老舗の“自殺用品専門店”では、あらゆる自殺に使うことが出来る豊富な品揃えが自慢。そんな店を経営する一家の末息子として誕生したアランはポジティブ思考の持ち主で、友達と一緒に両親の商売の邪魔を企むが ―

英題:The Suicide Shop


Le magasin des suicides_33「どんな自殺も必ず成功させる」ことが売りの自殺用品専門店。
素材違いの首つり用ロープ各種、三島由紀夫をモチーフにした腹切りセット、苦しまずに済むほど高価なありとあらゆる毒薬、ファンタジーな毒リンゴ、入水用頑丈な鎖付きブロックなどなど、店内に所狭しと並ぶ自殺用品々。
この店のある街は随分前から不景気に見舞われ、自殺者が急増。街のいたるところで自殺するものだから、公の場での自殺禁止令が出たほど。
街を歩けば自殺者にあたる、というこの街で唯一繁盛しているこのお店。ここに健康的でポジティブな次男坊が生まれた事から、このお店、この家族、やって来るお客、ひいては街全体が変わっていく―
 

  

 
Le magasin des suicides_41次男坊アランが生まれるまでのこの街の案内が面白い。
結構大きな都市で、車や人が一杯なんだけど、街全体を覆う霧のような憂鬱感。カメラが動けば画面の端に飛び降りる自殺者が映り、屋根に留まる鳩さえもあまりの絶望感に自殺する。

はびこる暗い空気に色が抜けた死に神のような街で唯一、色が付き、明るい電気が灯る店。でも、この店をやってる家族も顔にじっとりと絶望が張り付いてる。そんなお店にはいつも客がおり、自殺用具をオススメする奥さんだけが、まだ生き生きと見えるかな。オススメ台詞にも笑える。それにこの店は商品を売りっぱなしではなくて、その品物がきっちりとお役を遂げたかまでも調査するところが老舗たる所以となっている。
 
Le magasin des suicides_40年頃の長男、長女までもが、いつ自殺してもおかしくないようなこの家族に加わった次男坊アランは、普通の子供。遊んで笑ってイタズラして元気いっぱいなものだから、両親はちと心配になる。
そんな時、姉の誕生日にスカーフと音楽CDをプレゼント。姉はこれらのプレゼントを使って、本来の自分を取り戻す、ということなのだが、ちょっと分かりにくい。スカーフと音楽で自分の魅力に気が付くといった感じなのかな。
その後、店内でとばす姉のシャボン玉の綺麗なこと。フワフワ飛んでいくシャボン玉。自ら死ななくとも人生は短い。特に青春時代は。
 
Le magasin des suicides_12これら子供達の変化を見守る母親が、なかなかいい。明るい社会は自分たちを廃業に追い込むことになるんだけど、それらの変化に柔軟で、実はポジティブ思考だったという。
笑ったことがないという父親は、この仕事に生涯をかけていたが、実は「また、どうぞ」と客に声をかけることが出来ない(自殺してしまうから)この商売がストレスだったとわかり、息子や妻に後押しされるようにして固い頭を切り換えていく。この父親の名前が「ミシマ」。これはどうやら三島由紀夫にかけているようだ。
 
凝り固まった頭の中。少し目線を上げれば違う世界が待っているよ、というこの作品。無理にミュージカル仕立てにしなくてもいいのでは、とも思ったけれど、暗いディズニー作品みたいな感じが出て、それはそれで面白かったかも。原語がフランス語だったのも全体の陰鬱さを和らげていたように思う。