『デッドゾーン』(1983) - The Dead Zone –

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クローネンバーグ作品だからと身構えて観始めたが、すごく大人しい作品だった。妙なものも、妙なものとの結合も、妄想世界も無い。しかし主人公は特殊能力を手に入れてしまい、平凡だった生活が一変。彼の苦悩が始まる。そういった意味では監督お得意の「目に見えないものとの結合と苦悩」な作品かもしれない。
 
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■デッドゾーン - The Dead Zone -■

1983年/アメリカ/103分
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:ジェフリー・ボーム
原作:スティーヴン・キング「デッド・ゾーン」
製作:デブラ・ヒル
撮影:マーク・アーウィン
音楽:マイケル・ケイメン
出演:
クリストファー・ウォーケン(ジョン・スミス)
ブルック・アダムス(サラ)
マーティン・シーン(スティルソン議員)
ニコラス・キャンベル(フランク・ドッド)
ハーバート・ロム(サム・ウェイザク医師)
トム・スケリット(バナーマン保安官)
アンソニー・ザーブ(スチュアート)
ショーン・サリヴァン(ハーブ・スミス)
ジャッキー・バロウズ(ヴェラ・スミス)

解説:
常人にはない能力を備えたがために、世間との間に起きる摩擦に苦しみ、やがてその運命に取り込まれて行く男の悲劇を淡々と描いたSF映画の佳作。主人公に扮したC・ウォーケンの持ち味がいかんなく発揮されている。原作はスティーヴン・キング。

あらすじ:
交通事故に遭い5年の昏睡状態から覚めた時、手に触れるだけで相手の未来を予知出来るようになった男。ある議員がやがて世界を破滅に導くと知った時、男は自分の使命を感じとるが-
 (allcinema)


The Dead Zone_12結婚を決めた恋人を持つ学校教師ジョンは、充実した毎日を送るごく普通の人だった。そんな彼がある夜、大きな自動車事故に巻き込まれ昏睡状態に陥る。それは5年も続き、その間に恋人も去ってしまった。しかし、それら失ってしまった時間と恋人の代わりに彼はあるものを手に入れたことを知る。それは手を触れるだけで、その人に関連する「死」にまつわるビジョンが見えるという特殊能力だった。
 
その力で、ある女性の娘があわや火事で死ぬところを助けた彼は、瞬く間にマスコミの標的となる。しかし、それは好意的なものではなく、世間の目に晒されることで苦しむ結果となった。逃げるように実家を離れ、静かに家庭教師を始めたジョンだったが、あることがきっかけで、大統領候補の議員が当選し、近い将来、ミサイルをある国に向けて発射するビジョンを見てしまう。驚いた彼は、この議員の命を奪うために銃を手に取るが―
 
 
The Dead Zone_14ジョンに備わってしまった能力とは他人の「デッド・ゾーン」― 「死」にまつわるビジョンを見てしまうこと。そのほとんどは苦しみと絶望のシーンであり、それを体験することで彼はどんどん消耗してしまう。こんな能力を与えた神を呪うほどに。しかし彼は善良な人々に囲まれていた。そんな彼らの助言を聞くうち、彼はこの能力を「命を助ける」ための自分の使命なのだと自覚する。特に昏睡状態の時から世話になっているウェイザク医師の言葉は大きな意味を持った。
 
ジョンが尋ねる。
「若いヒトラーに会うことが出来たとすれば、あなたは彼を殺すか?」
医師は答える。
「私は人の命を救う医者だ。そして人間が大好きだ。もちろん、殺すだろう。」
 
この印象的な会話が、ジョンをある行動へと移すきっかけとなる。彼が命を賭して行ったこと。この重大な意味を知る者は無い。彼は不幸だったのか? いや彼は微笑んでいた。最後に愛する人の顔を見ることが出来て。愛する人と一時の結婚生活を模した時間を持つことが出来て。少年を救えて。世界の破滅を救えて。
 
別の人と結婚したサラがジョンを訪ねてきた時は、なんて嫌な女だろうと思ったが、このラストのシーンで、それはジョンにとって必要だったのだと思い直した。
この悲しいラストは、いかにもクローネンバーグ監督らしい。
(原作は読んでおりません)