『チャイルドコール 呼声』(2011) - Babycall –

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この世の誰よりも何よりも愛する息子を守るため奔走する母親。そんな彼女に、他の人には見えない、聞こえない何かがひたひたと忍び寄る。お腹をざっくり切り開きホッチキスで留めた状態で走り回っていても、どこか透明感を感じさせるノオミ・ラパス主演。
 
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■チャイルドコール 呼声 - Babycall -■

2011年/ノルウェー・ドイツ・スウェーデン/96分
監督:ポール・シュレットアウネ
脚本:ポール・シュレットアウネ
製作:ポール・シュレットアウネ
撮影:ジョン・アンドレアス・アンダーソン
音楽:フェルナンド・ベラスケス
出演:
ノオミ・ラパス(アナ)

クリストファー・ヨーネル(ヘルゲ)
ベトレ・オーベンニル・バリング(アンデシュ)
スティーグ・R・アンダム(オーレ)
マリア・ボック(グレーテ)

解説:
「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のノオミ・ラパス主演で贈る北欧製サイコ・スリラー。夫の暴力から逃れて最愛の我が子と2人暮らしを始めたヒロインに迫る危機をサスペンス・フルに描く。監督は「ジャンク・メール」「隣人 ネクストドア」のポール・シュレットアウネ。

あらすじ:
ノルウェー、オスロ。夫の暴力から逃れるため、保護監視プログラムによって郊外のアパートに暮らし始めたアナと8歳の息子アンデシュ。不安を拭いきれないアナは、“チャイルドコール”という音声監視モニターを購入する。ある日、そのチャイルドコールから子どもの悲鳴が聞こえ、慌てて息子の部屋を覗くが、彼は静かに眠っていた。購入した店に相談し、別のチャイルドコールと混戦したのではないかと説明されるアナだったが-
 (allcinema)


Babycall_20暴力的な夫に息子を殺されかけ、息子アンデシュを連れて慌てて逃げ出した母親アナ。児童福祉サービスの取り計らいで用意してもらった郊外のアパートに鞄一つで身を隠す。福祉サービスの準備は万端で、アンデシュが急遽通うことになった学校でさえ二人の居所を漏らさない約束。この家を訪れるのは福祉サービスの担当者だけだった。
学校の送り向かえをするアナは、息子を別室で一人眠らせることさえも不安で“チャイルドコール”を手に入れる。これで安心して眠れることが出来るはずだった。
 
Babycall_22ある夜、アナの手元のチャイルドコールから泣き叫ぶ男の子の声が響いた。慌てて息子の部屋に向かったが息子はすやすやと眠っている。手に入れた電気店の店員ヘルゲに相談すると混線だと説明を受ける。しかし、その後もチャイルドコールからは虐待を受けているような子供の泣き声が。
そんな中、福祉サービス担当者から、息子の親権について夫側から裁判を起こされるかもしれないことを知らされ、ますます情緒が不安定になっていく彼女。思いもよらず仲良くなったヘルゲが彼女の話し相手になるが、夜中に同じアパートに住む何者かが死体のようなものを車に運び込むのを目撃していまう。
 
Babycall_13次々とアナを襲う不安な出来事。
どんどん情緒不安定になっていく彼女だが、愛している息子を守りたいという気持ち一点だけが彼女を支えている。福祉サービスはそれを支えるが、サービス側が注目しているのは「子供が健康的に毎日を送っているか」という点だけで、アナの心情までは理解しない。不安だからと学校に通わせないのもいけないし、子供らしく外で遊ばせないのもだめ。そのような普通の生活を送ることが出来ないのならば、母親アナでさえ養育者失格となり子供を取り上げられてしまう。かなり厳しい。
アナにとってヘルゲとの会話だけが心を癒す時間となるが、ある時、ヘルゲを怒らせてしまい、それさえも失ってしまう。心のよりどころが無くなった彼女が最後に取った行動とは―

 
 
 
【ここからは謎解きとネタバレが】
  オチを知ってから観る場合、面白さは1/20くらいになってしまいます
 
 
 
 
 
 
 

この物語で本当に起きたこと

Babycall_14それはヘルゲが関わり、登場しているシーンだけ。あのアパートで暮らすアナには息子が死んだことを理解できていない。息子アンデシュがいくつで亡くなったのかは分からないが、アナの見る妄想の中では成長さえしているかもしれない。学校への送り向かえをしていたのは、もちろんアンデシュを連れてではなく、一人でうろついていたのだろう。だから学校側の人が不審な目でアナを見る。声をかけられそうになると、その場を逃げ出すアナ。最初はあまりの過保護ぶりを注意され、福祉サービスに告げられるのが嫌だからと思ったが。

 

「非現実が見える」と言ったアナ。

福祉サービスの人や学校の先生とのやり取りは、全て妄想、夢の中の出来事。記憶が消えている数時間の間に見ていたこと。そんな中、子供の虐待に関する一部のことは事実。あの子供の殺され方はアンデシュが父親から受けた虐待と被っているために起きた、これもまたアナの妄想になる。実際、どう殺されてしまったかは不明だが、アパートから運び出されていたことから、部屋で殺されたのだろう。
 
 

じゃあ誰が「アパートの絵」を?

Babycall_21こうなると当然書いたのはアナということに。でもちょっと違う気もする。アナの言う「無い物が見える」とは、起きていないことが見える、という他にも「死んだ人が見える」という意味もあるんじゃないだろうか。だから殺された子供がアンデシュの友達として登場する。でもアナは「死んだ人」とは気付いていない。それはアンデシュがまだ生きて自分と暮らしているからだ。あの絵を描いたのは友達に起きたことを知らせたいアンデシュだったかもしれない。

 

どうしてずぶ濡れだったのか

Babycall_17これが分からない。
あの湖で親子を見かけ、心が安らいだように見えたアナ。あの母親と小さな女の子は誰だったのか?女の子は子供だった頃のアナではないか。アナ親子も父親から逃げてきた境遇で同じようにこの地で暮らしていたのでは。そしてアパートで福祉サービスの男に言い寄られていたのはアナの母親で、その記憶がアナの妄想に入り込んだのではないだろうか。
しかしこれではずぶ濡れになっていた理由にならない。今は駐車場になった場所で暴れていたというアナ。人に見えない物が見え、それを物質化させる事が出来るのか、、というような荒唐無稽な理由しか思いつかなかった。

 

ヘルゲ

ヘルゲは実在する。唯一アナと心を通わせた存在。それは彼自身もかつて子供の頃にこのアパートで母親から虐待を受けていた経験があり、心に傷を負っていたからだ。お互い何も詳しいことは言わないが、どこか似通ったところを感じたのだろうか。そんな彼の母親が危篤に陥ったときのヘルゲの気持ちを考えたら、胸が痛くなりそうだ。
物語途中でアンデシュの腕に青あざが発見され、もしかしたらアナの本性は虐待する母親なのか?と思わせるところがあるが、ヘルゲが「このアパートに住んでいたんだ」とアナに言った時、・・もしかしてっ?ヘルゲは大人になったアンデシュなのかっ?と一瞬考えてしまった。それ程この物語はラストまで観る者を翻弄する。


 
タイトルだけ見ればチャイルドコールから妙なものが聞こえるB級ホラーのようだが、二重三重に深いところまで降りていくミステリーなお話。加えて全ての原因が子供の虐待であるところが、社会派ドラマでもある。
虐待の経験があっても善良な大人となったヘルゲ。アナはとても不幸な女性だったが、ヘルゲと知り合うことが出来、最後にようやく、あの湖畔で息子と幸せな時を持つことが出来た。これらは全て運命だったのだろうか。