『その土曜日、7時58分』(2007) - Before the Devil Knows You’re Dead –

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思いつきで起こした事件がある一家をバラバラにし破滅させていく。演技派フィリップ・シーモア・ホフマンが社会的に成功しているのに関わらず、父親や妻との関係で悩みどす黒いものを抱えた兄役を、イーサン・ホークは妻に捨てられ、養育費の支払いもままならない情けない弟役を。いつまでも綺麗なマリサ・トメイにチンピラ役マイケル・シャノン。見応えありますよー。
 
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■その土曜日、7時58分 – Before the Devil Knows You’re Dead -■

2007年/アメリカ/117分
監督:シドニー・ルメット
脚本:ケリー・マスターソン
製作:マイケル・セレンジー 他
製作総指揮:デヴィッド・バーグスタイン 他
撮影:ロン・フォーチュナト
音楽:カーター・バーウェル
出演:
フィリップ・シーモア・ホフマン(アンディ・ハンソン)
イーサン・ホーク(ハンク・ハンソン)
マリサ・トメイ(ジーナ・ハンソン)
アルバート・フィニー(チャールズ・ハンソン)
ローズマリー・ハリス(ナネット・ハンソン)
ブライアン・F・オバーン(ボビー)
マイケル・シャノン(デックス)

解説:
「十二人の怒れる男」「狼たちの午後」の名匠シドニー・ルメット監督が、一つの強盗計画を軸に浮かび上がるある家族の深い心の闇を実力派俳優陣の豪華なアンサンブルで描き出すサスペンス・ドラマ。出演はフィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイ、アルバート・フィニー。
 (allcinema)
 
あらすじ:
金に困った兄弟が、自分たちの両親が経営している宝石店に強盗に入る計画を立てる。店は保険に入っており、誰にも被害を及ぼさずに金を手に入れる完璧な計画だったはずが、強盗殺人事件へと発展し-

 

原題:Before the Devil Knows You’re Dead
これはアイルランドの諺、慣用句のようなもので
「悪魔がお前の死んだことを知る30分前には、天国に着いていますように」という意味のもの。
これはラスト近くのシーンに繋がっており、とても感慨深い。
 
*ふじつぼだんきさんがコメントで疑問を呈してくださって調べてみました。



Before the Devil Knows You're Dead_11子供達は皆成人し、ぞれぞれに家庭を持っているハンソン家。年老いた両親は小さな宝石店を営み、日々、規律正しく生きているアメリカのごく普通の家族。
兄のアンディは不動産業界で会計の仕事を持ち給料もいい。豪華なマンションに綺麗な妻と住み、何不自由ないように見えるが、どこか心に空虚感が漂い、セレブ特有のクスリに溺れる面も持つ。そしてやがて会社の金に手を付けた。
弟のハンクは妻と離婚。私立の学校に通う娘のために高い授業料と養育費、妻子の住む家のローンまで抱えており、いつもお金が無い。返すあても無いのに時々、兄の所に金を借りに行く。
そんな弟を見て、兄のアンディはある計画を思いつく。これがうまくいけば、何もかも一からやり直せる。
 
Before the Devil Knows You're Dead_26仕事が出来、自分のことを頭がいいと思っている兄が弟に相談したのは、両親の宝石店への強盗。自分は店の入るショッピングモールで顔が知れているからと、弟一人に実行させようと話をもちかける。でも、この弟を見てください。とても何かを一人で成し遂げられるようなタマではございませんですよ。ここに兄の身勝手さが見え隠れする。そして弟に対する認識の甘さも。
案の定、弟ハンクは自分一人ではとても無理だと判断し、兄には内緒で助っ人をボビーに頼む。ボビーはチンピラヤクザ者で強盗もお手の物、、のはずだったが、見事に失敗した上、店番をしていた母親を銃で撃ち、自分も返り討ちに遭い命を落とす。
この兄弟は自分たちのせいで母親を死の淵に追いやってしまったのだ。
 
Before the Devil Knows You're Dead_21愛する妻が危篤になって嘆き悲しむ父親の元に集まった子供達。
罪悪感で一杯のハンクはその場にいられない。アンディは取り繕いながらも父親に声をかけるが、金が早急に必要なことは変わらず、次の手段を考えているところに、弟がもう一つ失敗していたことが発覚。兄弟は崖っぷちに立たされる。
そんな二人のおかしな行動を父親チャールズは気が付き、二人の行動をこっそり監視するが―

 
Before the Devil Knows You're Dead_15なんとも悲惨な物語。
強盗が起きたのがある土曜日の7時58分。この事件に関係するのは基本的にハンソン家の両親と兄弟だ。子供の頃から疎外感を感じ、卑屈に育った兄と父親の関係、弱虫で決断力の無い弟と兄の関係、お金はあっても満たされない思いで一杯の妻と兄の関係、完全にバカにされ、きちんと養育費を払え、払えと迫る弟とその妻子との関係。
それらの複雑な、心の奥底に閉じ込めている不満というものが、この事件をきっかけに一気に噴出し、本来の人間性が露呈する。

身勝手な理由で会社の金を使い込んだ兄アンディがこの後とる行動は、全くもって本来持っている性格や行動様式がそのまま現れているもので、事の発端である「身勝手」そのもの。あれだけ愛し合っていた妻も目に入らないとは、いかがなものか。
それに巻き込まれてしまったハンクは可哀想だったが、最後の最後とった行動を見る限り、やはり責任感が感じられない。
そして被害者である父親チャールズ。彼はこの二人の兄弟を育てたことで「加害者」でもあると感じたのだろうか。ラストの解釈はいろいろだろうが、自分の責任で裁いたのか、と。
 
この父親の最後の行動は鬼気迫るものがあり目が離せなかった。また泣きながら笑っているような表情でヒドいことを言うフィリップ・シーモア・ホフマン(兄アンディ)。なんて魅力的な俳優さんだろう。『リプリー』から好きなんですよねー。そして情けない役が天下一品のイーサン・ホークといくつになっても歳を取らないマリサ・トメイ。
どの立場で感情移入したのかは、自分の現在の立ち位置の表れかも。