『ランズエンド - 闇の孤島 -』(2012) - Blood –

ずっしりと重たいドラマがイギリスから到着。銀色の髪と瞳でちょっと風変わりな役が多いポール・ベタニー。彼を際物役者だと誤解していました。本作の彼は刑事だった父親を越えようと日々努力している正義感の強い刑事。そんな彼が罪を犯し、壊れていく様子をリアルに演じている。支えるのは弟クリシー(お気に入りのスティーヴン・グレアム)。原題「BLOOD」とは家族の絆の意味だ。

Blood_movie2012 
■ランズエンド - 闇の孤島 – – Blood -■
2012年/イギリス/92分
監督:ニック・マーフィ
脚本:ビル・ギャラガー
製作:ピッパ・ハリス 他
製作総指揮:サム・メンデス 他
撮影:ジョージ・リッチモンド
音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:
ポール・ベタニー(ジョー・フェアバーン)
スティーヴン・グレアム(クリシー・フェアバーン)
マーク・ストロング(ロバート・セイモア)
ブライアン・コックス(レニー・フェアバーン)
ベン・クロンプトン(ジェイソン・ビューリー)
 
解説:
警察一家の悲劇を描いた本作の製作総指揮を務めるのは、『007 スカイフォール』、『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞に輝いたサム・メンデス。罪を犯し苦悩する刑事役を見事に怪演するポール・ベタニーをはじめ、スティーヴン・グレアム、マーク・ストロングなど、数々の映画作品で活躍しているイギリスの個性派俳優が出演
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あらすじ:
英国西北部の海辺の町ランカシャーで少女の惨殺事件が発生。担当刑事ジョーと弟のクリシーは捜査を進めるにあたり、ある一人の元小児性愛犯罪者の男をマーク。証拠不十分で釈放になったものの納得がいかないジョーは、自白させるために男を連れ出し勢い余って殺してしまう-


Blood_movie2012強い風がいつもコートをはためかす寒々しい海辺の町ランカシャー。
海岸沿いにあるだだっ広いことだけが取り柄の公園に、それも冷たいコンクリートの上に、ある日、少女の遺体が置かれていた。十数か所もナイフで刺され、広げられるように置かれていた少女。
捜査担当の刑事ジョーと弟であり相棒でもあるクリシーの目は怒りに震える。少し前にも少女が殺され、まだ犯人は捕まっていなかったのだ。さっそく二人は目星をつけていた元小児性愛犯罪者ビューリーをしょっ引く。尋問は厳しく続けられたが自白せず、これといった証拠も無く、ニヤつきながら釈放されていくビューリー。
どうしても納得できなかったジョーは、クリシーと一緒にビューリーを車に拉致、干潮時に地続きになる島へ連れて行き、暴力を使って無理やり自白させた。そして犯人しか知りえないある事をビューリーが口走った時、持っていたスコップで思わず頭を叩きのめして殺してしまう─
 
 
Blood_movie2012妻と娘との関係でストレスを抱えている刑事ジョーが突発的に犯してしまった「殺人」。最初は少女を殺すような奴だから天罰だったんだ、と自分を納得させようとするが、徐々に芽生え、どんどん大きくなっていく罪悪感。家族のために絶対秘密にしなくては、と思えば思うほど苦しむ彼。妄想の一部として彼の目の前に現れるビューリーは、最初はニヤつく犯罪者、そして次第に彼を導く彼の「良心」となっていく。
ずっと兄に支えられてきた弟クリシーはジョーの秘密を共有するが、彼もまた、罪悪感に苛まれる。いつの間にか兄を支えているのは自分だということに気が付いていない。
 
そんな二人に絡んで、今は引退し、痴呆症が出始めている元凄腕刑事だった父親。兄のジョーは父親のいろいろな言葉をいつも覚えており、仕事の、生き方の指標にもしている。そして友人であり同僚の刑事ロバート。彼は友人であるジョーの様子がおかしいことに気が付いている。そして行方不明になったビューリーに起きたらしいことをじわじわと捜査し始めるが、これは事件を暴くというよりは、ジョーを助けるためのように見える。
 
雨こそ降っていないものの、どんよりとした、なのに湿度を感じさせないイギリスのグレーがかった海を背景に、皆の心はすれ違い、ばらばらになっていくかのように見せる。しかし実は、無駄なシーン、無駄な台詞を一切排し、立ち居振る舞いや表情で言葉よりも多くを語りかける登場人物たち。ラストでジョーが流した涙には、とても暖かい血が通っていた。
 
Blood_movie2012背中をムチでビシバシと叩いた後、ヴァンパイア・スレイヤーみたいな役をしているのを見て、「あぁ、またこんなのに出ているのか..」と思っていたポール・ベタニー。こんなに実力派だとは知らなかった。いいですよー、ポール・ベタニー。
お気に入りのスティーヴン・グレアムのシリアスな演技も見られたし、何より脳内悪者のブライアン・コックスが痴呆老人の役で、役者たちの意外な面を見ることができるとてもおいしい作品だったです。
ではまた

 

 icon-film ポール・ベタニー
Blood_17イギリス・ロンドン出身の俳優。
祖父母も両親も俳優という演劇一家で育つ。両親の離婚でポールは16歳で学校を中退し、家を出てストリート・パフォーマーとして活動した。19歳から3年間、セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインのドラマ・センターで演技を学んだ後にスティーブン・ダルドリーの舞台「インスペクター・コールズ」でウエスト・エンドデビュー。その後ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで『ジュリアス・シーザー』や『ロミオとジュリエット』の舞台に立った。
 
■主な出演作
・ベント/堕ちた饗宴(1997)
・スカートの翼ひろげて(1998)
・キス★キス★バン★バン(2000)
・ROCK YOU!(2001)
・ビューティフル・マインド(2001)
・マスター・アンド・コマンダー(2003)
・ドッグヴィル(2003)
・ファイヤーウォール(2006)
・ダ・ヴィンチ・コード(2006)
・アイアンマン(2008/声の出演)
・ヴィクトリア女王 世紀の愛(2009)
・レギオン(2010)
・ツーリスト(2010)
・アイアンマン2(2010/声の出演)
・プリースト(2011)
・アベンジャーズ(2012/声の出演)
・アイアンマン3(2013/声の出演)
・Transcendence(2014)