『388』(2011) - 388 Arletta Avenue –

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『キューブ(1997)』では立方体に閉じ込められ極限状態にある人間を描き出したナタリ監督が、今度は安らぎの場である自分の家を監視され、目に見えない者と戦う孤独な夫を作品にした。この夫が暴き出したのは、見えない敵か、それとも自分の中に潜む何かだったのか―。
 

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■388 – 388 Arletta Avenue -■
2011年/カナダ/87分

監督・脚本:ランドール・コール
製作:マーク・スミス 他
製作総指揮:ヴィンチェンゾ・ナタリ
撮影:ギャヴィン・スミス
出演:
ニック・スタール(ジェームズ)
ミア・カーシュナー(エイミー)
デヴォン・サワ(ビル)
アーロン・エイブラムス(アレックス)
シャーロット・サリヴァン(シェリー)
クリスタ・ブリッジス(キャサリン)
 

解説:
とある高級住宅街の388番地に暮らす若夫婦。幸せなはずの2人が、何者かの悪意によって日常を破壊されていく。「CUBE」のV・ナタリ総指揮の不条理サスペンス。(WOWOW)

あらすじ:
カナダ、トロントの閑静な住宅街アレッタ通り388番地に暮らすジェームズとエイミー夫妻。ある日、出勤のために自分の車に乗り込んだジェームズは、自分の物ではない音楽CDがセットされていることに気付き、妻エイミーのイタズラと思い込んで口論に。仕事から戻ると妻は置き手紙を残して家出。最初は姉の所にでも行っているのだろうと考えていたジェームズだったが、妻はいつまでも戻らず居所も不明な上、家の中で不可解な出来事が起き始める-


388_14ある一軒の家を車から監視する顔の見えない何者か。ビデオカメラとマイクで執拗にその家に住む夫婦を見張る常軌を逸した行動は、鍵のありかを知った時にさらに進むことになる。
二人が留守の間に家に忍び込み、あらゆる場所に隠しカメラを設置。それはもう、一部屋一ヵ所どころか、まるで照明器具のようにあらゆる所に設置する。本箱、机の下、目覚まし時計の中、書斎のデスク。家の中以外には夫の車の後部座席、エアコン排出口の中、さらには夫の勤め先のデスクまで。そして二人が就寝中に屋内に侵入しビデオカメラに二人を収める何者かの後ろ姿。
一体、何がしたいのか。この夫婦は何か恨みを買っているのか?
しかし夫婦はいたって普通のよくある若い二人。時々、口論はするもののすぐに仲直りする愛し合っている二人。
ではなぜ?
 
388_17監視されていることを知らない幸せなカップルは、妻の家出により事態が一変する。
「頭を整理したい」
こんな一言で家を出た妻エイミー。夫ジェームズは妻の姉に居所を聞くが、知らないと言う。もともとうまくいっていなかったのか、ジェームズはその言葉を鵜呑みにはしていない。それでも知り合いという知り合いに電話で問い合わせするも、エイミーの行き先は分からない。1日経ち、3日経ち、1週間経つ頃には心配のあまり何も手が付かなくなるジェームズ。
あれほど明るく窓から爽やかな風の入っていたこの家は、いつしか暗い影が長く伸びるような湿った家に。
それら全てを録画している隠しカメラ。苦しむジェームズを笑うかのように。
 
 
今時、簡単にそれも格安で手に入る隠しカメラやマイク。
ついこの間も何かの番組で、住人の知らない間に設置されていた隠しマイクがいかに多いか、というのをやっていた。その番組では、その手の趣味の愛好家がいたり、ストーカーだったり、泥棒などの犯罪に利用する、などが目的だと言っていたが、この作品の監視者の目的は不明だ。
 
388_24何か起きたとき、人はその原因や理由を考え、その結末を予想する。
しかしジェームズには何も分からない。忽然と姿を消した妻の行動の理由も、この先どうなるかも想像できない。警察に相談しても埒があかない状態に苦しむ彼に、この監視者はここぞとばかりに自分の存在を少し知らしめる。ジェームズは妻が何かの犯罪に巻き込まれたことを確信するが、それはあまりにも第三者には判断の付かないものである上、妻の置き手紙もあり、誰も信じてくれない。そればかりか義姉はジェームズが妹に何かをしたのではないか?とまで言ってくる。

追い詰められたジェームズは次第に物事の判断ができなくなり、常軌を逸した行動に出る。ごく普通の常識人だったはずの彼の、うまく隠されたていた心の中のものが、全て隠しカメラの前にさらけ出される。もっとうまく人に説明出来れば、、日頃から義姉ときちんと話し合っていれば、、もっと信用できる友人がいれば、、短気なところをもっと反省していれば、、。
それもこれも全ては妻を愛するがゆえなだけに同情するが、やはりやってしまった事への報いは必ずある―。
 
この監視者は何者で何が目的だったのか。
それはラストで分かるようになっている。かなり恐ろしいものであることだけは間違いない。
哀れ、ジェームズとエイミー・・・