『アナザー プラネット』(2011) - Another Earth –

空に浮かぶもう一つの地球。そこには同じ海、同じ大陸、同じ国、同じ町、同じ人々、同じ歴史が。そして同じ自分がそこにいるとしたらあなたはどうしますか?きっとその事実を確かめなくてはいられないはず。その人も自分と同じ考え方で同じ人生を生き、同じ人と触れ合っているのか?そして同じ事を後悔しているのだろうか?今の自分に満足しているのだろうか-?
 

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■アナザー プラネット – Another Earth -■
2011年/アメリカ/93分
監督:マイク・ケイヒル
脚本:マイク・ケイヒル、ブリット・マーリング
撮影:マイク・ケイヒル
音楽:フォール・オン・ユア・ソード
出演:
ブリット・マーリング(ローダ)

ウィリアム・メイポーザー(ジョン)
ロビン・ロード・テーラー(ジェフ)
マシュー=リー・アルルバフ(アレックス)

解説:
ふとした過ちから車の衝突事故を起こし、妊婦と子どもを死なせてしまった若いヒロイン。刑期を終えて出所した後、世捨て人のような生活を送る遺族の夫のもとへ謝罪に出向いたものの、真実を告白しそびれた彼女は、身分を偽って彼のもとへ定期的に通い始める…。この贖罪のドラマと、上空に出現したもうひとつの地球というSF的な設定を巧みに絡ませながら、これが長編劇映画初挑戦となる新鋭のM・ケイヒル監督が、見応えのある作品世界を構築。2011年サンダンス映画祭で好評を博し、審査員特別賞他に輝いた。
 
あらすじ:
17歳で一流の名門大学MITへの合格を果たした秀才女学生のローダ。しかし、ある日彼女は車を運転中、ふとした気の緩みから、若い家族の乗る車に正面から突っ込み、妊婦と子どもを死なせてしまう。4年の刑期を終えて出所した後、ローダは、ひとり取り残されて世捨て人のような生活を送る遺族の夫ジョンのもとへ謝罪に出向いたものの、なかなか真実を告白できず、代わりに、清掃会社の一員を装って彼の家へ定期的に通い始める-
 (WOWOW)


その日、地球によく似た環境の惑星が見つかり大々的なニュースになった。大陸、海、空気。もしかしたら地球外生命体がいるかも知れない。そのラジオニュースを聞きながら車を運転していたローダ。17歳でMITに合格し、今後の人生は希望に満ちている。パーティで仲間と酒を飲み、「自分は無敵だ」とその夜を謳歌していた彼女。元々宇宙や星に興味があり、そのニュースを聞きながらほろ酔い気分で空を見上げた。うっすら見えるその星を見上げ続けた。ハンドルを握ったまんまで-。
 
対向車には大学教授ジョンと家族が乗っていた。この事故で妊娠していた妻と小さな男の子は亡くなり、夫ジョンは昏睡状態に陥ることになる。事故を起こしたローダは4年の実刑を受け収監された。星を見上げたことで、MITと今後の夢、3つの命が失われた。
Another Earth_254年後出所したローダは家に帰る。両親と弟は暖かく迎え入れてくれたが、どこか落ち着かなく、居場所が見つからない彼女。人と接したくない彼女は高校清掃の仕事を見つける。ネズミ色のつなぎを着込み、自慢の髪をフードに隠し、人間性も女性性も全て覆い隠して町を歩く彼女。今も消えない罪悪感で押しつぶされそうになっていた。
4年前に発見された謎の惑星については研究が進み、地球と全く同じ組成、環境であることがわかる。
 
Another Earth_19そんなある日、ジョンが昏睡状態から覚めたことを知ったローダ。いてもたってもいられずに、なんの準備も無いまま謝罪に向かった彼女。しかしやつれ果てたジョンの顔を見た途端、自分は清掃会社から派遣されたと嘘をついてしまう。片付けも出来ず、酒浸りの日々を送っていたジョンは彼女を雇うことにし、ローダは週に一度、ジョンの家を清掃することになった。そして事故の犯人であることを隠したまま、ローダとジョンは少しずつ交流を深めていく。
 
一方、謎の惑星は地球と全く同じ作りになっており、地表や海どころか、同じ町、建物、そして同じ人までもが住む、現在の地球のコピーであることが判明する。その惑星に向かう第一陣は広く一般からも公募され、応募したローダは難関を突破しメンバーに選ばれるが-

 
見つかった地球のコピーと、事故で人を死なせてしまったローダ。
この不安定で恐怖すら感じる2つの物語が同時進行するドキュメンタリー調の作品。素材は派手なものであるけれど、とても静かな調子でストーリーは進んでいく。
Another Earth_20事故の後、ほとんど人と会話しなくなってしまったローダ。そんな彼女が残されたジョンの家へ謝罪に向かうが、勇気が萎えてくじけてしまう。そして家の中が片付けられておらず荒れ果てているのを見て、派遣された清掃員だと言ってしまう。ローダにはこんな形でまずは謝罪するのが精一杯だったのだ。

そしてジョン。幼い息子と妊娠していた妻を一度に亡くし、それも分からず昏睡状態だったことでさえ、犯人を、自分を責め続けている。大きな家のいくつもある窓は暗く、ジョンがテレビをつけて酒浸りになっている部屋だけから明かりが漏れているのが、なんとも悲しくせつない。
そこにぽっかり浮かぶもう一つの地球。こちらの地球と全く同じ人間が同じように暮らしているという。
それも、ずっとシンクロして歴史は流れてきたが、こちら側が見つけたその瞬間から2つの地球の歴史はそれぞれの歩みを始めた。あちらの地球にも、自分を罰し続け後悔し続けている2人がいるのだろうか?それとも-
 
Another Earth_22こういうストーリーは細かいところを考え始めると頭がこんがらがるが、本作での「もう一つの地球」はあくまでもさらっと流されている。しかしローダとジョンにとっては無くてはならない存在になっていき、そこに救いを求める結果となる。
しかし本当に2人は救われたのだろうか?
自分には逆であったようなエンディングだった。救われればいいけれど・・
 
本作の主人公ローダを演じたのはブリット・マーリング。本作の脚本家にも名を連ねているが、他にも脚本家として参加している作品があるようだ。表情をあまり変えない静かな演技なのに感じられるローダの苦悩と優しさ。この魅力的なローダとジョンの風貌、少なめの台詞も相まって、タイトルから想像するのとは違ったとても情緒あふれた作品で、全体的にヨーロッパ映画のような印象を受けた。