『ラブリー・モリー』(2011) - Lovely Molly –

両親、とりわけ父親と何か事情がある姉妹。両親とも亡くなり、しばらく空き家になっていた実家に夫と移り住んだ妹モリーは、その古い屋敷にうごめく得体の知れないものに脅され支配されていく。その得体の知れないものとは、家に住み着く何かなのか、亡き父親の亡霊なのか、それともモリー自身が生み出した何かなのか-

■ラブリー・モリー - Lovely Molly -■

Lovely Molly_2011

2011年/アメリカ/99分
監督:エドゥアルド・サンチェス
原案:ジェイミー・ナッシュ
脚本:エドゥアルド・サンチェス
出演:
グレッチェン・ロッジ(モリー)
ジョニー・ルイス(ティム)
アレクサンドラ・ホールデン(ハンナ)

解説:
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のエドゥアルド・サンチェスが監督・脚本を務めたホラー作品。出演は「-less [レス]」のアレクサンドラ・ホールデンと「ワン・ミス・コール」「ランナウェイズ」のジョニー・ルイス。古い一軒家で暮らすことになった主人公が、見えない存在に翻弄され精神のバランスを崩していく姿を描く。2012年8月11日~31日開催の“渋谷ミッドナイト・マッドネス2012”で上映された。
 (allcinema)

あらすじ:
新婚のモリーとティムは空き家となって久しいモリーの実家に移り住むが、その夜から奇妙な物音に怯える生活が始まる。トラック運転手のティムは家を空けることが多く、怖い夜を一人で絶えていたモリーだったが、奇妙な物音はやがて明確な音となり、得体の知れないそれは、扉をたたきモリーの名を呼ぶようになる-


Lovely Molly_2011幸せいっぱいのティムとモリーのカップル。
2人は築100年は経とうかというモリーの実家に移り住んだ。この家はモリーが幼い頃に両親、姉と住んでいた屋敷。母、父と順に亡くなり、しばらく空き家になっていた。ティムは長距離トラックの運転手で家を空けることが多い。モリーは住み慣れたこの家で、穏やかにティムの帰りを待つはずだったが、ある夜、閉めたはずの勝手口が開けられ警報装置が作動する。警官に来てもらったが、特に侵入者はおらず、きちんと閉まっていなかったのだろうということに。訝しながらもティムはモリーを置いて仕事に出た。

Lovely Molly_2011そして、その夜から、一人になったモリーをからかうかのように、正体の知れない何かがモリーを弄ぶ。最初はモリーの名を呼ぶ声、足音、そしてドアをたたく音からこじ開けようとする大きな音へ。モリーは1年前の結婚式でも使ったビデオカメラで何とかその何者かの姿を撮ろうとする。

そんなモリーを心配する夫ティムと姉ハンナ。しかしモリーが聞こえ見えるモノは2人には聞こえず見えない。ますます常軌を逸した行動を取るモリーは、とうとうやめたはずのクスリにまでも溺れていく。しかしそれは現実から逃避出来ないばかりか、得体の知れないソレにどんどん追い詰められ、ますます近づくことを助けることになっただけだった-。

Lovely Molly_2011家に憑く何かに怯えるよくあるホラーだと思って観始めたこの作品。何か、ちょっと受ける感じが違う。
この家はモリー姉妹が昔住んでいた屋敷で、以前2人に何かよくないことが起こっており、2人には悪い思い出の場所。それも、そのよくないことに関わっていたのが実の父親らしい。このあたりは詳しく語られず、父親専用の椅子、怯える少女、逃げ込む客間、クローゼットに隠れる少女等々、子供の時の記憶が断片的に出てくるだけ。母親はおそらく自殺しており、父親が亡くなった時も警察沙汰であったらしいということしかわからない。

「よく、ここに帰ってくる気になったね」と姉に言われても何も答えないモリー。
そのモリーがティムの居ない間に、地下にある奇妙な紋章の付いたものを探したり、長く使われていなかった父親の椅子のカバーをはずしたりした頃から、徐々に、そして明確にその存在をアピールし出す何か。モリーは怖がりながらも、自分の家においでと言う姉の申し出にも応じず、その家に居続ける。
そして、かつてこの家で行われ、隠され続けてきた恐ろしいことを発見し、現在この家に住んでいる者の隠された企みを暴き出す。そしてついには自らも恐ろしい行動をとり、ソレに囚われてしまうという、内に潜む悪魔とその末路といった物語になっている。

Lovely Molly_2011悪魔は、この家に取り憑いていたのでは無く、人間がその行動により生み出したモノ。その行動とは理由があるにせよ、自分勝手で自己中心的で、非人間的な恐ろしい行いだ。それによって生み出された悪魔は物音をたて、次第に形をとり姿を見せる。思えば、子供の頃に脅かされていた悪魔は父親が生み出したモノで、夫婦で住み始めて出現したモノは彼が生み出した悪魔。そして最後に出てくるのはモリー自身が生み出したモノだろうか。姉の不幸そうな感じは、心に悪魔が住み着いてしまったからだろう。
最初のシーンで「何が起きても自分のせいじゃないから」と言うモリーは、取り憑かれているというより悪魔そのもの。
“モリー、愛するモリー”と呼びかけるのは悪魔ではなく、モリー自身なのだ。

ではまた

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