『キラー・スナイパー』(2011) - Killer Joe –

出てくる人、出てくる人、みんな人でなし。凡人の想像のとことん斜め上をいく救いの無さは、後味が悪くもあり爽快でもある。これは自分の人間性が試される作品だ。

Killer Joe_2011 
■キラー・スナイパー - Killer Joe -■
2011年/アメリカ/102分

監督:ウィリアム・フリードキン
脚本:トレイシー・レッツ
原作:トレイシー・レッツ「Killer Joe」
製作:ニコラス・シャルティエ他
製作総指揮:ゼヴ・フォアマン他
撮影:キャレブ・デシャネル
音楽:タイラー・ベイツ
出演:
マシュー・マコノヒー(”キラー”・ジョー・クーパー)
エミール・ハーシュ(クリス・スミス)
ジュノー・テンプル(ドティ・スミス)
ジーナ・ガーション(シャーラ・スミス)
トーマス・ヘイデン・チャーチ(アンセル・スミス)
マーク・マコーレイ(ディガー・ソームズ) 
 

解説:
「エクソシスト」で世界的に有名なウィリアム・フリードキンが監督した日本未公開作品。原作戯曲を執筆し脚本を手がけたのは「BUG/バグ」のトレイシー・レッツ。主演は「リンカーン弁護士」のマシュー・マコノヒーと「ダーケストアワー 消滅」のエミール・ハーシュが務めた。
 
あらすじ:
博打のせいで多額の借金を抱えるクリスは、実の父とその再婚相手である義母に、保険金目当ての実母殺害計画を打ち明ける。別れた母親の保険金は、父親に引き取られた頭の弱い妹ドティが受取人になっており、それを横取りしようというのだ。現職の刑事でありながら、金のために殺人を請け負う“キラー”ジョー・クーパーに母の殺害を持ちかけるが、彼は報酬を前金で受け取ると言い出した。トレイラーハウス暮らしのクリスたちにはそんな金などない。するとジョーは、前金の代わりとしてドティを要求してくるのだった- (allcinema)


 
Killer Joe_2011借金を返せず切羽詰まったクリスがトレーラーハウスに住む父親のところに泣きつきに来る。「そんな金なんかない、逃げればいいだろ?」と寝ぼけたことを言う父親にクリスは相談。母親が妹ドティを受け取りに人にして保険に入っている。母親を殺そう。殺しの裏家業をやっている警官ジョーに頼めば大丈夫だ。
 
この母親は父親とは離婚しており、アル中の薬漬け。父親はシャーラと再婚。ここに妹ドティが一緒にいる。ドティは少し頭が弱いということだが、天使のように愛らしく兄クリスはとても大事に可愛がっている。早速ジョーに連絡したクリス。保険金は5万ドル。殺しの値段は2万5千ドル。残りは4人で山分けと決まる。
打ち合わせに来たジョーはドティを気に入り、前金が無いという父子に担保としてドティを借り受け、自分のものに。
 
Killer Joe_2011まさか、こんな天使のような愛らしいドティに手を出さないと思っていたら、そのまま自分の思うようにするジョー。気にしながらも結局は可愛い妹を差し出した兄クリス。なんにも気にしない父親と義母。
これで保険金殺人の手はずは整ったはずだったが、どうしても妹に申し訳ないという思いが強くなり、クリスはジョーに無かったことにしてくれと言うが、、これがなんとも中途半端..
今更遅いわ、と思わず突っ込む自分。
 
 
Killer Joe_2011このふがいないクリスを筆頭に、本作の登場人物達はどれも人でなしの強烈なキャラクター達だ。
一度決めたことをすぐにひっくり返し、結局は銃で思い通りにしようとする中途半端キャラのクリス。おそらく彼は、最後まできちんとやり遂げたという達成感を知らずに今まで人生を無意味に過ごしてきただろう。何事も深く考えない父親は、目先のことで右へ行ったり左へ行ったり、自身のみならず自分の子供さえ大事にしない。義母シャーラはこれまた強烈。義理の息子がいようとも平気で半裸な姿で家の中をうろうろする口汚いののしり屋。特に最初の登場は下半身が丸見えのTシャツ1枚姿..。彼女に恥の概念は無い。
 
Killer Joe_2011殺し屋ジョーは言うまでも無く、警官でありながらお金で殺しを請け負う殺人者。クールで隙の無い人物かと思いきや、ドティを金で買ったも同然に自分のものにする人でなし。うー、嫌悪感が…
クリスを追い回すヤクザものは言うまでも無く、シャーラの浮気相手もひどいもの。
 
それでも人間には善良なる部分、正義感なるものがあるのではと、どの登場人物にもそれらを一瞬垣間見せるシーンがある。が、が、が、しかし、、それは見事に裏切られ、彼らの善なる魂は全てドティに移ってしまったか。
そして残る最後の登場人物、天使のドティが全てをうまくまとめるのかと期待したが、それも全て夢と消える。
おそらく、消えただろう..。今思えば、時々えげつないことを言っていた。

本作は脚本も書いたトレイシー・レッツの舞台劇を原作としている。いったいどんな舞台なのか、一度観てみたい気がする。
ではまた