『ドラゴン・タトゥーの女』(2011) - The Girl with the Dragon Tattoo –

スウェーデン版『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009)』のリメイクだとばっかり思っていた本作。舞台はスウェーデン、主役もミカエルという名前で、ハリウッドにしては設定がそのままだーと思っていたら、原作「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」のハリウッド映画化だったという..。
 
The Girl with the Dragon Tattoo_001
■ドラゴン・タトゥーの女 – The Girl with the Dragon Tattoo -■

2011年/アメリカ/158分
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:スティーヴン・ザイリアン
原作:スティーグ・ラーソン
製作:ソロン・スターモス、オーレ・センドベリ他
製作総指揮:アンニ・ファウルビエ・フェルナンデス他
撮影:ジェフ・クローネンウェス
音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
出演:
ダニエル・クレイグ(ミカエル・ブルムクヴィスト)
ルーニー・マーラ(リスベット・サランデル)
クリストファー・プラマー(ヘンリック・ヴァンゲル)
ステラン・スカルスガルド(マルティン・ヴァンゲル)
ロビン・ライト(エリカ・ベルジェ)
ジョエリー・リチャードソン(アニタ・ヴァンゲル)

解説:
2009年に本国スウェーデンでも映像化された原作を、「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」のD・フィンチャー監督が再映画化。前回の映像化以上に、原作に盛り込まれた膨大な情報量(ヴァンゲル家の家系の説明など)を反映させるという、同監督らしい凝った演出が光る(アカデミー賞では編集賞に輝いた)。スターの顔ぶれの華やかさもハリウッドらしく、6代目007スターのクレイグもカッコいいが、「ソーシャル~」で小さな役だったR・マーラが本作では熱演して大化け。アカデミー主演女優賞候補になった。
 (WOWOW)
 
あらすじ:
社会派ジャーナリストとして雑誌「ミレニアム」に所属するミカエル・ブルムクヴィスト。そんな彼に大財閥ヴァンゲル・グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルからある仕事の依頼が入る。それは、40年前に一族が住む島から忽然と姿を消した少女ハリエット・ヴァンゲルの失踪事件の調査だった。姪であるハリエットを可愛がっていたヘンリックは彼女の失踪について忘れることが出来ずにおり、一族の誰かがハリエットを殺したのだと信じ切っていた。
盗人、守銭奴、ゴロツキどもの化けの皮をはがし、真実を明らかにしてくれるよう言われたミカエルは、この調査を引き受けるが-


 
The Girl with the Dragon Tattoo_15年間を通して東京よりも8~10度ほど平均気温が低いスウェーデンの首都ストックホルム。そのストックホルムよりまだ北に位置する小さな町ヘーデスタの沖合に浮かぶ島ヘーデビー。ここはストックホルムに住む人が「北極」と揶揄するほどの極寒の世界(どちらも架空の地であるが)。
本作ではここヘーデビー島が舞台となり、フィンチャー監督が得意とする「閉塞感が人を押しつぶしていく」様子を描いていく。
 
The Girl with the Dragon Tattoo_03この島はスウェーデンの大財閥ヴァンゲル家が所有しており、一族のほとんどがこの島に住み、各屋敷を構えている。当主にあたる一族の長ヘンリック・ヴァンゲルは大金持ちでありながら常識人でもある。その彼が長年心を痛めている過去のある出来事。それは、可愛がっていた姪ハリエットの失踪事件だ。
 
40年前のその日は町のパレードにあわせて、ヴァンゲル家でも一族の晩餐会が催されていた。しかし島と町を結ぶ橋で事故が起き、人命救助のために人々がばたばたしている間に16歳の少女ハリエットの姿が忽然と消える。
海に囲まれたこの島と町を結ぶのは1本の橋だけであり、事故で警察もたくさん出ていたが誰も見かけておらず船も無くなっていない。神隠しにあったように失踪してしまったハリエット。ヘンリックは消去法で考えていった結果、一族の誰かがハリエットを殺害しどこかに埋めたと確信した。しかし島内全てを掘り返すわけにもいかず、事件は少女行方不明のまま迷宮入りしたのだった。
 
The Girl with the Dragon Tattoo_1440年経ってもなお心を痛めていたヘンリックが、この事件に決着をつけるため事件の調査を依頼したのがジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィスト。ちょうどミカエルは名誉毀損の罪で有罪になり多額の賠償金を支払うことと引き替えに身体は空いていた。事件の詳細をヘンリックに聞いて興味を持ち、調査を引き受けることにした彼は、調査の助手が欲しいと願う。そして紹介されたのが天才的ハッカーであり、調査のプロであるリスベット・サランデルであった。
ミカエルは、この無口で無愛想な奇妙な相棒リスベットとともに、事件を一から見直し調査していく。しかしそれは、いみじくもヘンリックが「盗人、守銭奴、ゴロツキども」と評した、大財閥ヴァンゲル一族の深い隠された闇を暴いていくことになっていく-。

    

 
本作は、このハリエット失踪事件を軸に
・名誉毀損で訴えられ、真実を追究するジャーナリストとして自分の仕事に行き詰まったミカエル
・その複雑な生い立ちと後見人の付いた立場で自由に行動できないリスベット
・お金はあってもがんじがらめなヴァンゲル一族
などの閉塞感漂う人間達が、雪と氷の世界でもがく姿を描いていく。
The Girl with the Dragon Tattoo_22本作では、もがく人々は善良な人であり、自由に行動をしている者は悪意に満ちた人間となっているが、実はそれは当たり前のことで、人が社会の中で生きていくためには、それ相当の規律が必要であり、と同時に不自由な思いもするものなのだ。

社会の中で生活しながら、自己の自由のみを追求するとどうなるか。それは色々な意味で他人を傷つけることになる。本作のハリエット失踪に関わった人間も同じであり、結果、その悪意に満ちた人間は自由を失うこととなった。
そして真実を追究し、必要以上に巻かれていた固い鎖から解き放たれた者は、一つ前進することが出来た。
 
..なーんて、抽象的に書いてみたが、この作品の「悪意に満ちた人間」には心底吐き気がする。この研ぎ澄まされたような白銀の世界には全く似つかわしくないほど、どろどろとしていやらしく辟易する。
このあたりの「静と動」、「気温の低さ」はスウェーデン版よりも本作の方がより伝わってきた。
しかしリスベット・サランデルについては、奇妙でとらえどころが無く、性別不詳、年齢不詳な感じはスウェーデン版ノオミ・ラパスの方が上(でも美女に化けるシーンではルーニー・マーラの勝ち
The Girl with the Dragon Tattoo_24 The Girl with the Dragon Tattoo_13
 
原作は三部作となっており、スウェーデンでは全て映画化、ハリウッド版もこの第1部の後、第2部・第3部の映画化が決まっているらしい。ハリウッド版もよくできていたので今から楽しみ。
 
 「ミレニアム」スティーグ・ラーソン著
   第1部 :ドラゴン・タトゥーの女
   第2部 :火と戯れる女
   第3部 :眠れる女と狂卓の騎士

 
スウェーデン版3作の中では、事件の中身の面白さと、よりリスベットが中心となっていく「第2部:火と戯れる女」が一番面白く、第3部はちょっとくどい印象を受けた。


 
さて、登場人物はそう多くは無いのだが、会話の中にだけ出てくるヴァンゲル一族の人物を含めると、ちとこんがらがるかもしれません。ようくヘンリックの話を聞いて整理しながら観ていくときちんと分かるようにはなっています。
ハリエットに一体何が起きたのか?
ハリエット失踪に関わったその人物こそ、一番自由を求めてもがいていた人かもしれません。
ではまた