『Virginia/ヴァージニア』(2011) - Twixt –

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現実なのか、夢なのか。ちょい売れオカルト作家が体験した田舎町での出来事。おどろおどろしいオカルトホラーなのかと思いきや、コミカルにリズミカルに物語は進んでいく。個性ある登場人物のいったいどこまでが実在するのか?

■Virginia/ヴァージニア - Twixt -■
2011年/アメリカ/90分
監督:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:フランシス・フォード・コッポラ
製作:フランシス・フォード・コッポラ
製作総指揮:アナヒド・ナザリアン、フレッド・ロス
撮影:ミハイ・マライメア・Jr
音楽:ダン・ディーコン、オスバルド・ゴリホフ
出演:
ヴァル・キルマー(ホール・ボルティモア)
エル・ファニング(V)
ブルース・ダーン(ボビー・ラグレインジ)
ベン・チャップリン(エドガー・アラン・ポー)
ジョアンヌ・ウォーリー(デニス)
ドン・ノヴェロ(メルヴィン)
デヴィッド・ペイマー(マル・マルキン)
アルデン・エーレンライク(フラミンゴ)
トム・ウェイツ(ナレーター)
 
解説:
巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が自ら製作を務め、インディペンデントのスタイルで撮り上げたファンタジー・ミステリー。訪問した田舎町で少女殺人事件に遭遇した作家が、夢に現われたエドガー・アラン・ポーと謎の少女に導かれ事件の真相へと近づいていくさまを、ミステリアスかつゴシック・テイストあふれる筆致で描き出す。主演は「ドアーズ」のヴァル・キルマー、共演に「SOMEWHERE」「SUPER 8/スーパーエイト」のエル・ファニング。
 (allcinema)
 
あらすじ:
次作の執筆がなかなか進まないオカルト作家ボルティモアは、自身の著作を携えサイン会と称して田舎町の本屋を回っていた。そんな彼がその昔エドガー・アラン・ポーが滞在したこともあるという町に辿り着く。
サイン会で手持ちぶさたにしていると、ミステリー好きの地元の保安官がやって来て、モルグに胸に杭を打ち込まれた身元不明の少女の死体があるから見せてやろうと誘われる。そしてこれを題材にして一緒に小説を書かないかと提案されるが-

Twixt :betwixtの縮約形で「どっちつかず、狭間」などの意


 
小説家、脚本家など作家その人を主役にした映画作品は案外多い。

・マンハッタン(1979/ウディ・アレン)
・シャイニング(1980/ジャック・ニコルソン)
・スタンド・バイ・ミー(1986/ウィル・ウィートン)
・ミザリー(1990/ジェームズ・カーン)
・バートン・フィンク(1991/ジョン・タトゥーロ)
・KAFKA 迷宮の悪夢(1991/ジェレミー・アイアンズ)
・裸のランチ(1991ピーター・ウェラー)
・永遠に美しく・・・(1992/ゴールディ・ホーン)
・小説家を見つけたら(2000/ショーン・コネリー)
1408・めぐりあう時間たち(2002/二コール・キッドマン)
・アダプテーション(2002/ニコラス・ケイジ)
・恋愛適齢期(2003/ダイアン・キートン)
・恋は邪魔者(2003/レネー・ゼルヴィガー)
スイミング・プール(2003/シャーロット・ランプリング)
・シークレット・ウィンドウ(2004/ジョニー・デップ)
・ミス・ポター(2006/レニー・ゼルウィガー)
・カポーティ(2006/フィリップ・シーモア・ホフマン)
・1408号室(2007/ジョン・キューザック)
推理作家ポー 最期の5日間(2012/ジョン・キューザック)




などなど。
上を見ると割とスリラー、ホラーものも多くて、作家自身が物作りの際に現実と狂気の狭間に陥って苦悩する様子が浮かび上がってくる。
そして今回、本作で登場するのがオカルト作家ホール・ボルティモア。彼も次作の執筆がなかなか、と言うより全く進まず、妻デニスに「お金が無い!」と日々どやされ、著作をかき集めサイン会という名のどさ周りの旅に出ている。他の作家と違うのは生来のポジティブ思考。それにいい加減さとアル中が混じり合って、本人はうんざりしながらも、妻から逃れてそれなりに楽しい旅を満喫している。
(ちなみに妻役ジョアンヌ・ウォーリーはボルティモア役ヴァル・キルマーの元妻)
 
Twixt_03そんな彼が今日辿り着いた小さな田舎町。ナレーターが言うように町の中央を1本の通りが走っているが、保安官事務所や小さな商店が数軒あるだけの、時代に取り残されたような本屋さえ無いちっぽけな町。その昔、かのエドガー・アラン・ポーが宿泊、滞在したと言われるホテルさえも火事で廃業、今でも廃屋のようになってくすぶっている。

ボルティモアは仕方なく金物屋の店先を借りて著作を並べ、露天商のような、これまたちっぽけなサイン会を開く。作家ボルティモアの名など聞いたこともない町の人が前をちらほら行きすぎた後、小説家志望でもあるこの町の保安官ラグレインジが揚々とやって来る。
「見つかったばかりの(獲れたてと言わんばかり)奇妙な少女の遺体があるから、モルグまで見に来ないか?」
そう誘われたボルティモアは躊躇しながらも怖いもの見たさでラグレインジに付いてモルグまで。そしてそこで見たものは胸に杭が打ち込まれた少女の惨殺死体だった。
 
この町では連続殺人が起きていると説明する保安官ラグレインジ。こんな奇妙な死体まで見つかって、これは一級のミステリーではないか!と。これらを題材にして一緒に小説を書こうではないか!と。
それを安請け合いした生来いい加減なアル中ボルティモア。しかし、その夜から彼は奇妙な夢を見始める。
 
Twixt_04 森の奥深くで出会った「V」という名の白い少女。
 廃屋だったはずのホテルに宿泊しているエドガー・アラン・ポー。
 彼らの話す、このホテルであった子供達の大量殺人。
 「V」の正体-

 
ボルティモアは現実も夢もお構いなく、新しい小説を書くためだけに彼らの話に耳を傾け、物語を書き上げていく。しかし、その物語の結末は、自分自信の忘れたい過去と向き合わなければ生まれない、とポーに諭される。

    

 
Twixt_02本作はこうやって、保安官達のいる現実とボルティモアの見る夢の世界を行ったり来たりしながら進んでいく。しかし本当に保安官達のいる世界は現実なのか?
だって保安官とその助手は、いつまでたっても杭少女の死体を調べようともせず、警察らしい仕事は全くしていないような。挙げ句の果てに、近くであれば効果があるとか言って、モルグの前でこっくりさんをやる始末。

川向こうにたむろする若者達を邪悪な吸血鬼と吐き捨てるが、やはり対策を打たない(仕事しようよ)。
ボルティモアは夢で聞いたことを元に、現実世界でも調査のようなものをやり始めるが、悪魔に呪われていると噂のある時計台に登ってみたところで、特に何も無い。いったいこの現実世界に意味はあるのか?
 
そして夢と現実の世界が入り乱れ、境界が曖昧になったその時に明かされる「V」の正体-


本作はエドガー・アラン・ポーを敬愛している三文小説家がようやく書き上げたものは、ポーの3番煎じだった、というお話なのか。あちらこちらに小説家様に対する皮肉がちりばめられ、コメディのようでもある。
(タイトル「Twixt」=「どっちつかず」)
オカルトホラーと思って借りて観たのにアル中のファンタジーだったとがっかりしたけれど、最後のヴァル・キルマーの笑顔で全部許そう、と思うような作品でした。
ときおり作品内で夢のように現れては消え去るかっこいいヴァル・キルマーに会いたい方にはお勧めです。
ではまた