『エミリー・ローズ』(2005) - The Exorcism of Emily Rose –

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信じるも、信じないも、あなた次第です

 
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■エミリー・ローズ - The Exorcism of Emily Rose -■
2005年/アメリカ/120分
監督:スコット・デリクソン
脚本:ポール・ハリス・ボードマン、スコット・デリクソン
製作:ポール・ハリス・ボードマン、ボー・フリン
製作総指揮:アンドレ・ラマル、テリー・マッケイ他
撮影:トム・スターン
音楽:クリストファー・ヤング
 
出演:
ジェニファー・カーペンター(エミリー・ローズ)
ローラ・リニー(エリン・ブルナー弁護士)
トム・ウィルキンソン(ムーア神父)
キャンベル・スコット(イーサン・トマス検事)
コルム・フィオール(カール・ガンダーソン)
ジョシュア・クローズ(ジェイソン)
メアリー・ベス・ハート(ブリュースター判事)
ダンカン・フレイザー(カートライト博士)
 
解説:
実話を基に、悪魔に取り憑かれてこの世を去った少女の数奇な運命を辿っていくオカルト・ホラー。悪魔祓いによって少女を死なせたとして法廷に立たされた神父と女性弁護士の真実を巡る緊迫の裁判劇を描く。監督は「ヘルレイザー/ゲート・オブ・インフェルノ」のスコット・デリクソン。出演は「愛についてのキンゼイ・レポート」のローラ・リニーと「エターナル・サンシャイン」のトム・ウィルキンソン。また、新進女優のジェニファー・カーペンターがタイトルロールを熱演。
 (allcinema)
 
あらすじ:
奨学金が下り、晴れて大学生となったエミリー・ローズ。夢に向かって楽しい学生生活を送っていたある日の夜、焦げ臭い匂いと共に目が覚めたエミリーは、奇妙な現象に襲われる。それ以後、幻覚、幻聴に悩まされ、精神科で治療を受けるも一向によくならず実家に帰される。
両親に相談された地元の神父ムーアは、悪魔憑きだと確信。エクソシスムを行い悪魔を祓おうとするがエミリーは衰弱の後、死亡する-


エクソシスム(悪魔祓い)を題材にした映画作品は1973年から始まる『エクソシスト』シリーズから、最近では『ザ・ライト -エクソシストの真実-(2010)』、モキュメンタリー調の『ラスト・エクソシズム(2010)』などがある。これらのほとんどは、悪魔に憑かれた少女を助けるべく悪魔と戦う神父とその家族の物語になっている。
The Exorcism of Emily Rose_08が、この『エミリー・ローズ』は、悪魔祓いで助けられず少女を死なせてしまった神父が法に基づき訴追され、結果行われた裁判がその主な舞台となっているところで他の作品とは少し違っている。
 
神-。悪魔-。
その目に見えないが故に人々の信仰と恐怖の対象となっているもの。
神の僕である神父と悪魔の戦いの結果が法廷で裁かれるという、夢と現実を一緒にしたような、ある種、不思議なこの現象は実話に基づいている。
 

アンネリーゼ・ミシェル事件 (1952-1976)/ドイツ
アンネリーゼは16歳の頃から震えなどの異変が身体に出始め、「てんかん」と診断。薬を処方され暫くは落ち着いていたが、やがて普通のてんかんの症状を逸した症状が出始め、幻覚を見たり、身体を何かに持ち上げられベッドに何度も叩きつけられるような事が起き始める。
The Exorcism of Emily Rose_10薬を飲んでも治まらず、やがて虫を食べるようにもなり、自傷行為が酷くなる。とても本人の声とは思えない声で汚い言葉を吐いたり、彼女が知りもしないラテン語を喋るようにもなった。彼女は自分が悪魔に取り憑かれたのだと考えた。
両親が教会に悪魔祓いを依頼するが拒まれ、1975年、22歳の時にようやく悪魔祓いの許可が出る。カトリックのエルンスト・アルト司祭(41歳)とアーノルト・レンツ(67歳)がエクソシズム(悪魔祓い)を行う。司祭が「お前は誰だ?」と心に思うと、悪魔は返事をし、名を名乗った。アンネリーゼにはなんと6体もの悪魔が取り憑いていた。この際の肉声テープも存在する。
Wiki:アンネリーゼ・ミシェル

 
上記、アンネリーゼの悪魔に取り憑かれた様子は映画『エクソシスト』のリーガンのようだ。
本作でのエミリーの様子は、裁判で両親の、友人の、被告ムーア神父の証言という形で詳細に語られていく。
The Exorcism of Emily Rose_01最初は、学生寮の自分の部屋で焦げ臭い匂いがして夜中の3時に目が覚めた彼女(「夜中の3時」には意味があり、キリストが絶命した昼の3時の対角であることから悪魔の行動が活発になる時間ということらしい)。火事かと思い廊下に出るが何事もない。しかし人のいない廊下に不気味なものを覚え慌てて部屋に戻る。が、異変はさらに続く。テーブルの上にあるものが勝手に縁まで移動し床に落ちびっくりしているところに、ベッドに何者かが乗ってくる。さらには身体の上に目に見えぬものが乗りかかり首を絞めてくる-。
こうして始まった不気味な現象は、幻覚、幻聴までも伴い、見えない何かの強力な力のせいなのか身体が硬直しあらぬ方向へと折れ曲がる。精神科で検査し投薬を受けるが直ることはなく、実家に戻ることになったエミリー。
しかしますますひどくなる病状に、敬虔なカトリック信者である両親は神父に相談。様子を見に来たムーア神父と両親はエミリーが悪魔に憑かれているとの判断を下すのだった。

  

 
The Exorcism of Emily Rose_05過失致死で訴追されたムーア神父を弁護するのは弁護士エリン・ブルナー。野心家でやり手のブルナーは、つい最近も殺人を犯して死刑になっておかしくないほどの人間を無罪に持ち込んでいる。今回の件も神父を弁護することで世間の注目を浴び、名声を得ることも目的の一つとして弁護を引き受けた。彼女自身は神を信じてはいない。
 
ところで、神を信じないということは悪魔も信じない、という事になる。反対に悪魔の存在を知らしめる、という事は同時に神の存在を信用したことになる。今回の裁判ではここが重要なポイントになってくる。
あくまでもエミリーは精神疾患であり、服薬を止め病状を悪化させ死に至らしめた事を追求してくる検事側。対する弁護士ブルナーは、被告人が悪魔祓いを行ったことを正当化するため「悪魔の存在」を証明することが必要になってくる。
神も悪魔も信じないブルナー。しかし裁判が進むにつれ、夜中の3時に目が覚めるようになり、誰もいないはずの自分の部屋に得体の知れない何かの影が横切る。そして散歩に出た時にたまたま拾ったペンダントに自分のイニシャルを発見したブルナーは、少しずつ神についての心情が変化していく。
 
裁判が進み、次々に明かされるエミリーの状態。証拠物件として提出されたレコーダーには、悪魔祓いの様子がそのまま録音されていた。
 「お前の名を名乗れ!」
   1・2・3・4・5・6・・
 「神のもとに、名乗ることを命ずる!」
   カイン(アダムとエヴァの息子。弟のアベルを殺し、人類最初の殺人者とされる。)
   ネロ(キリスト教徒を迫害し、後世、「暴君」と評されたローマ皇帝)
   ユダ(十二使徒のひとり。キリストを裏切った。)
   レギオンの一人(悪霊)
   ベリアル(よこしまな者)
   ルシファー(堕天してサタンとなったとされる地獄の王)
 
The Exorcism of Emily Rose_04ヘブライ語、ラテン語、アラム語など古代の言葉を操り口汚くののしるエミリーは、とうとう6人の悪魔の名を叫ぶ。しかし同時に、これらの名は普通の学生であれば知識として知っている名であり、各種の古代語もエミリーは高校、大学で授業をとっていたと検事が明かす。
エミリーの手足に現れたのは聖痕(スティグマータ)であったと証言する神父に、それは暴れた時、または自傷行為によって付いた傷だと反撃する検事。

  

 
両親、神父、友人、精神科医、弁護士、検事..。
それぞれの立場から観察する対象エミリー。それは愛する娘であり、迷える子羊であり、患者であり、被害者である者。エミリーは亡くなった。どうして亡くなったのかを語りたいために神父はこの裁判に臨んだ。どちらにせよエミリーは帰っては来ない。今回の一件で救われたのは、いったい誰であったのだろうか?それは最後に枕でゆっくり眠ることが出来るようになった人であろう。
 

恐れおののいて 自分の救いを達成しなさい
  -ピリピ2章12-18節-