『ゾンビ大陸 アフリカン』(2010) - The Dead –

国民のほとんどがゾンビに。
アフリカの地で生き残りが軍人というところに違和感が-

TheDead_01
■ゾンビ大陸 アフリカン - The Dead -■
2010年/イギリス/105分
監督:ハワード・J・フォード、ジョン・フォード
脚本:ハワード・J・フォード、ジョン・フォード
製作総指揮:アミール・S・モアレミ
撮影:ジョン・フォード
音楽:イムラン・アーマド
 
出演:
ロブ・フリーマン(ブライアン・マーフィー中尉)
プリンス・デヴィッド・オシーア(デンベレ)
デヴィッド・ドントー

解説:
ゾンビ史上初!舞台はアフリカ!
ゾンビのルーツは、アフリカに端を発するブードゥー教に由来する。しかしながら、そのゾンビの聖地なるアフリカを完全舞台にしたゾンビの映画は無かった。かつて、ジョージ・A・ロメロが生み出したゾンビ《死者が生き返り、人を襲い、肉を食らう》その原点回帰ともいえる本作は、群がるゾンビ達からの脱出劇を、大自然が立ちはだかる過酷なアフリカの荒野でオールロケを敢行した異色作!暗黒のネイティブ・ゾンビ達が忍び寄る、アフリカンゾンビ・サファリへようこそ!
 (公式サイト:ゾンビ大陸アフリカン)
 
あらすじ:
TheDead_05アフリカ大陸にゾンビが発生。その猛威に駐留アメリカ軍は撤退を決定するが、時すでに遅く最後の撤退機さえも墜落。唯一生き残った軍エンジニアのブライアン・マーフィー中尉は、愛する家族の元に帰ることだけを胸に生存をかけて米軍基地を目指す。途中、息子の行方を捜す地元兵士デンベレと出会い、協力してアフリカからの脱出を試みるが-


 
砂埃舞う灼熱の大地アフリカ。慣れない者が生きていくだけでも大変そうなこの過酷な地に、ウィルスのようにゾンビがどんどん増殖していく。そんな中に一人放り込まれたマーフィー中尉が祖国アメリカを目指す物語。これが『ゾンビ大陸 アフリカン』だ。
ホラーだー、ゾンビだー、とわくわくしながら観始めすぐに出てくる「シエラレオネ」という国名。ここで「んっ」となった自分。なんかイヤーな思いにいきなり襲われる。
 

「シエラレオネ」
Sierra_Leone初めて聞いたのはディカプリオ主演『ブラッド・ダイヤモンド(2006)』。シエラレオネ共和国の内戦(1991-2000年)を背景に、反政府軍資金のためにダイヤモンド採掘場で強制労働させられる民衆、取れたダイヤモンドの不法取引、この取引にかかわる各国の専門家、最後に身につける各国の富裕層を描いている。
観た当時、一番下層に横たわる民衆のうめき声が聞こえてくるようで、この構図に対する嫌悪感を覚えたものだ。作品内で表現されていたかは忘れたが、ヒストリーチャンネルか何かの特集で見た、ダイヤを盗もうとしたり逃げだそうとしたりした人々の腕を軍人がばっさり切り落とすといった非道な振る舞いが行われていたという事実に戦慄を感じた。
「ブラッド・ダイヤモンド(血のダイヤ)」には、そういった意味も込められている。
     参考:紛争ダイヤモンド

ということで、ゾンビホラーを観るつもりで楽しくソファに座ったというのに、この「シエラレオネ」が舞台になっているということで、いきなりテンションが下がる..。ですので、このレビューはあまり楽しいものにならないかもしれません。
 

  

 
TheDead_02瞬く間にゾンビ大陸となってしまったアフリカ。駐留アメリカ軍も撤退を決め、最後の飛行機が飛び立った。しかしエンジンが止まった上、乗せていた民間人がゾンビ化。機はシエラレオネの海へと墜落した。
数名生き残ったが、すぐにゾンビに襲われ、ぎりぎりのところで逃げだし唯一の生き残りとなったエンジニアのブライアン・マーフィー中尉。特技をいかしてポンコツ車を直し米軍基地を目指す。
途中でゾンビに襲われ食べられそうになったところを助けてくれた地元の兵士デンベレと合流。息子を捜して北へ向かう彼と協力してのサバイバルが始まる。
 
TheDead_09ゾンビは昔ながらのゆっくり歩く系。仕留めるには頭を撃つ、首を切り落とすなどしなくてはならない。死人の形相で走って追いかけてはこないので、ある程度の余裕はあるが、一端つかまるとわらわらと集まってくるゾンビに食われてしまう。食われると死んでゾンビに。
アフリカ大陸は広いが、人々のほとんどがゾンビ化しているため、あらゆる所にゾンビがいる。それらを撃ち、斬りつけ、車でなぎ倒して進んでいく兵士の二人。
ゾンビは無表情に倒れていくが、それを見ている時、例の↑ばっさりを思い出してしまう。
(兵士ではなく)軍にとっての民衆など、ゾンビと一緒で邪魔だと思えば簡単に撃ち殺していたのではないか?
今はゾンビとなっているから仕方ないが、かつても無能で感情などないと民衆をゾンビ扱いしていたのではないか?
これは、単なるゾンビ映画ではなく、かつて起きた、行われた事に対して断罪しているのではないか?
 
…などと邪念が頭をよぎる。
TheDead_10地元の反政府軍だったと思われる男と、内政干渉のような形で駐留するアメリカ軍の男。この二人が協力して行動していくところも皮肉に思える。しかし、この状況では共闘するしかない。あわせて今、二人が求めていることは、「国」や「軍隊」、「反乱」「敵」などではなく、家族に会いたい、家族の無事を確認したいという共通する事柄だけだ。そして二人はお互いの命を守りながら先を目指していく。
二人が途中で出会う村人を守る兵士達。リーダーはこの村出身ということだったが、↑のばっさりを思うとき、何か製作的に偽善でうさんくさい感じがして、ちょっとやり過ぎでは?と感じる話も盛り込まれる。
 
TheDead_12そして終盤にはゾンビから奪った衣をまとった、こんな姿にもなるマーフィー中尉。
これはもはや人種、宗教、国、立場などを越えて一つになろうじゃないか、という製作の意図がこの衣から透けて見えるような気がするのだが。
..考えすぎかしら?


 
-ということで、本作は楽しいゾンビ映画にとどまらず、色々な思惑や訴えを内包している(ように思われる)実は難しいゾンビ映画なのです。続編も決定しており、今度の舞台はインドだとか。こんどの題材はなんなんだろう?
ではまた