『パラノイドパーク』(2007) - Paranoid Park –

見たいモノしか見ない、見えない――。

Paranoid Park_01
■パラノイドパーク - Paranoid Park -■
2007年/フランス・アメリカ/85分
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ガス・ヴァン・サント
製作:ニール・コップ、デヴィッド・クレス
撮影:クリストファー・ドイル、レイン・キャシー・リー
 
出演:
ゲイブ・ネヴァンス(アレックス)
テイラー・モンセン(ジェニファー)
ジェイク・ミラー(ジャレッド)
ローレン・マッキニー(メイシー)
スコット・グリーン(スクラッチ)
ダン・リウ(リチャード・ルー刑事)

解説:
一見ごく普通の16歳の少年が送る不安定な日常を追う中で浮かび上がっていく衝撃の真実。G・ヴァン・サント監督が独特の浮遊感漂う映像を通して放った、異色の青春映画。

(WOWOW)

あらすじ:
Paranoid Park_17オレゴン州ポートランド。16歳の高校生アレックスは最近始めたスケートボードにすっかり夢中で、可愛い彼女とのデートさえおざなりに。そんな彼が通い始めたのはスケーター達が集まる“パラノイドパーク”。上手でかっこいい彼らを眺めているだけで時間が経つのも忘れるアレックス。
そんなある夜、一人でパラノイドパークに出かけた彼は、そこをたまり場にしている男に誘われ、走行中の貨物列車に飛び乗る遊びに参加。しかし警備員に見つかり警棒を持って近づいてきた彼に激しく追い立てられる-


 
Paranoid Park_18父親が家を出て、もうすぐ離婚が成立する両親。腫れ物にさわるような母親。くだらない事をしゃべり続ける13歳の弟。しかしアレックスは特に気にしない。友達のジャレッドも同じような境遇で、別になんていうこともない、珍しくもないことだ。今、自分の頭にあるのはスケボーを上手になることだけ。“パラノイドパーク”に通って、上手なスケーターの滑りを眺めたいことだけ-。
 
そんなアレックスの毎日を描いた本作。カメラはアレックスの目にするものを、アレックスの心と一緒に動いていく。ボードを自在に操り、宙に舞っては着地する。そんな格好いい彼らの間を一緒になって飛んでいくアレックス。
(実際は座って眺めているだけだが-。)
彼女はいるけど、これ以上親密になるとめんどくさくなりそうで、彼女が求めてもセックスはしない。他にも仲のいい女の子もいるし、可愛い子が近くに来れば心が躍りときめく。が、表情には出さない。そんなアレックスの感情を表すように急に流れる音楽。カメラと音楽が隠している彼の感情を表現する。
 
Paranoid Park_21その夜は友達のジャレッドとではなく、一人でパラノイドパークに出かけた。いつものようにスケーター達を眺めていると不良グループが話しかけてきた。ノリでそのまま彼らに同行し、走る貨物列車に飛び乗るという少し危険で他愛ない遊びに興じる。不良達にとってはいつもの遊びなのだろうが、警備員にとっては違った。警棒を手に走る列車を追ってくる警備員。追いついた彼はアレックス達に警棒を振るう。
そしてその夜、無残に殺された警備員のニュースが流れる-

 
Paranoid Park_15物語はアレックスの記憶と語りに沿って、現在と過去をいったりきたり。アレックスの思い出したくない事はなかなか出てこない。
女の子のように綺麗な顔の、大きな目のアレックス。無垢な子供のような表情であるが、ガラスが砕ける一瞬前のような危うさが画面を覆って、次に何が出てくるのか、何が起きるのか、画面から目が離せない。
重大な事実は彼を押しつぶしそうになるが、シャワーで全てを洗い流し背中を向ければ、全ては終わり。何も無かったことに出来るアレックスが怖い。捜査に来ている刑事を見つめる大きな目は、「こんな僕が悪いことなど出来るはずないでしょう?」と言っているようで、決して目をそらすことはない。


監督はガス・ヴァン・サント
エレファント(2003)』では暴走する少年を、『ラストデイズ(2005)』では壊れていくカート・コバーンを映画にしている。
複雑な人間の感情を淡々と、説明も大げさなBGMも無く半ばあっさりと表現する手法。
今回の『パラノイドパーク』を観れば、今の10代のことを少しわかるかもしれない。
ではまた