一度目、あなたを欺く。
二度目、真実が見える。

■裏切りのサーカス - Tinker Tailor Soldier Spy -■
2011年/イギリス・フランス/128分
監督:トーマス・アルフレッドソン
原作:ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」
脚本:ブリジット・オコナー、ピーター・ストローハン
製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ロビン・スロヴォ
製作総指揮:ピーター・モーガン、ライザ・チェイシン、ロン・ハルパーン他
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
音楽:アルベルト・イグレシアス
出演:
ゲイリー・オールドマン(ジョージ・スマイリー)
ジョン・ハート (コントロール)
トビー・ジョーンズ(パーシー・アレリン/ティンカー・鍵掛屋)
コリン・ファース(ビル・ヘイドン/テイラー・仕立屋)
キーラン・ハインズ(ロイ・ブランド/ソルジャー・兵隊)
デヴィッド・デンシック(トビー・エスタヘイス/プアマン・貧乏人)
マーク・ストロング(ジム・プリドー)
ベネディクト・カンバーバッチ(ピーター・ギラム)
トム・ハーディ(リッキー・ター)
サイモン・マクバーニー(オリヴァー・レイコン)
スヴェトラーナ・コドチェンコワ(イリーナ)
キャシー・バーク(コニー・サックス)
■解説:
1979年に英国BBCでドラマ化されたジョン・ル・カレの傑作スパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督で映画化したサスペンス・ドラマ。東西冷戦下の英国諜報部<サーカス>を舞台に、ソ連の二重スパイをあぶり出すべく繰り広げられる緊迫の頭脳戦とスパイの世界に身を置く男たちの過酷な生き様を、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ジョン・ハートら英国が誇る実力派俳優陣の豪華競演とストイックな演出でスリリングかつ緊張感いっぱいに描き出す。 (allcinema)
■あらすじ:

しばらくしてコントロールが謎の死をとげ、政府のレイコン次官から突然呼び出されたスマイリー。サーカスの幹部に「いる」とされる“もぐら”を突き止めろと極秘命令が下される-
本作は元MI6諜報員であるスパイ小説の大家ジョン・ル・カレが、実在の事件を基に1974年に発表した小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ -Tinker, Tailor, Soldier, Spy-」を原作としている。
スパイ映画といえば派手なものと思われがちだが、元来スパイというのは潜入して情報を得るのが仕事。その地域、その場所に自然に溶け込み、決して目立ってはいけないのだ-
MI6(イギリス情報局秘密情報部)
イギリス情報局秘密情報部(Secret Intelligence Service、SIS)は、イギリスの情報機関の1つで、英国国外での人による諜報活動を主な任務としている。一般的にはMI6(Military Intelligence section 6 – 軍情報部第6課)としても知られており、公式サイトに表示されているロゴマークも”SECRET INTELLIGENCE SERVICE MI6″となっている。
古くからイギリスはMI6等諜報機関の存在を否定していたが、007の原作者である、イアン・フレミングは元MI6の諜報員であることを公表。2010年9月21日には初めてMI6の歴史をまとめた書籍(Keith Jeffery The Secret History of MI6)が公式に発売され、かつて作家のサマセット・モームやグレアム・グリーン、アーサー・ランサムなどが所属していたことなどが公式に明らかにされている。(Wiki:イギリス情報局秘密情報部)
英国諜報部〈サーカス〉のリーダー‘コントロール’の元にもたらされたある情報。それはサーカスの幹部5人のうちの誰かがソ連の二重スパイであるというもの。その詳細情報と引き替えにハンガリーの将軍の亡命を手助けするよう要求された彼は独断で動き始め、部下である工作員ジム・プリドーをハンガリーに派遣、情報源と接触させる。しかしその動きはソ連側に筒抜けになっており、密会場所は急襲されプリドーは銃撃、死亡の結果となった。
責任を取ってサーカスを去ることになったコントロールだったが、何故か右腕のスマイリーも一緒に退職するよう勧告。妻が家を出てしまい孤独に苛まれていたスマイリーは、仕事まで失うことになってしまう。
その後、コントロールが謎の死をとげ、なおも不穏な空気が流れる中、政府のレイコン次官に呼び出されたスマイリー。残った4人の幹部に潜む“もぐら”を突き止めろという極秘命令を突然下される。
彼は信頼のおける、まだ若いピーター・ギラム(MI6実働部隊)と組み、かつて仲間であった4人の中の裏切り者を極秘に調査するため動き始める。
ここまで、キャストのほとんどが次々と登場し、この中の誰かが裏切り者になるだろうからと、必死で顔と名前とストーリーを追わなくてはならない。なので登場人物をさくっとまとめてみる。
追う者
追われる者(4人の幹部/下は暗号名)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
パーシー・アレリン ティンカー(鍵掛屋) |
ビル・ヘイドン テイラー(仕立屋) |
ロイ・ブランド ソルジャー(兵隊) |
トビー・エスタヘイス プアマン(貧乏人) |
その他関係者
![]() |
![]() |
ジム・プリドー ハンガリーで撃たれる |
リッキー・ター ピーターの部下 |
全員MI6。裏切り者捜しを始めたコントロールは最初、スマイリーも他の4人と同様怪しんでいた。しかしハンガリーの作戦失敗で問責辞任、退職をしたときに、スマイリーも辞めさせている。これは何故か?
スマイリーは長年コントロールの右腕であり、信頼も篤かったはずだが..。コントロールはスマイリーこそ“もぐら”だと思ったのか、それともMI6から遠ざけて第三者的立場をとらせるため(もぐら捜査をしやすくするため)だったのか。
コントロールの死後、スマイリーが陣頭指揮を執ってもぐらの捜査が始まるが、ソ連伝説の諜報員‘カーラ’の話とスマイリー片腕ピーター・ギラムの部下リッキー・ターの怪しい動きが重なって、事態はますますこじれてくる。そこに残った4人の幹部による新しい作戦「ウィッチクラフト」までが絡み、もはや“もぐら”は誰であってもおかしくない状態になる。
二重スパイ“もぐら”は誰か?が本作の大筋だが、最後まで観終わって“もぐら”が判明した後も残る、この疑心暗鬼な感じはいったいなんだろう。2時間近く疑り深い目で登場人物を見てきたからだろうか?どうも、あの人物の最後のニヤリが疑わしくって仕方ない。
あわせて本作は他国の諜報活動を主な任務としながら自国の仲間を捜査するスマイリーと、一晩かけたスマイリーの呼びかけに「二重スパイになるくらいなら死を選ぶ」としてソ連に帰っていった‘カーラ’の対比も面白い。
物語最後の狙撃は、仲間を、自分を裏切った者への許し難い感情からのものなのか?それとも政府の陰謀なのか?
一度観ただけでは納得いかず、再度観て考えるべき所はいくつも残る。
一度目、あなたを欺く。
二度目、真実が見える。
もう一度、観たほうがいいようだ。でもそれで解決するのか?な
原作はジョン・ル・カレ。1974年に刊行されたものだが、実はシリーズ物の一つで全部で5作ある。
・死者にかかってきた電話 -Call for the Dead-(1961)
・高貴なる殺人 -A Murder of Quaity-(1962)
・ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ -Tinker, Tailor, Soldier, Spy-(1974)
・スクールボーイ閣下 -The Honourable Schoolboy-(1977)
・スマイリーと仲間たち -Smiley’s People-(1979)
これらを読めば、判明するのだろうか。
ではまた