『ゴーストライター』(2010) - The Ghost Writer –

知りすぎた、男(ゴースト)――。

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■ゴーストライター - The Ghost Writer -■ 
2010年/フランス・ドイツ・イギリス/128分
監督:ロマン・ポランスキー
原作:ロバート・ハリス「ゴーストライター」
脚本:ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー
製作:ロマン・ポランスキー、ロベール・ベンムッサ、アラン・サルド
製作総指揮:ヘニング・モルフェンター
撮影:パヴェル・エデルマン
音楽:アレクサンドル・デスプラ
 
出演:
ユアン・マクレガー(ゴーストライター)
ピアース・ブロスナン(アダム・ラング)
キム・キャトラル(アメリア・ブライ)
オリヴィア・ウィリアムズ(ルース・ラング)
トム・ウィルキンソン(ポール・エメット)
ティモシー・ハットン(シドニー・クロール)
ジョン・バーンサル(リック・リカルデッリ)
デヴィッド・リントール(ストレンジャー)
ロバート・パフ(リチャード・ライカート)
ジェームズ・ベルーシ(ジョン・マドックス)
イーライ・ウォラック(ヴィニヤードの老人)

解説:
元英国首相の自叙伝執筆のゴーストライターとして雇われた主人公がいつしか重大機密に触れて危難に陥る様子を、R・ポランスキー監督がスリル満点に描いて絶賛された傑作。
 
あらすじ:
TheGhostWriter_15元英国首相ラングの自叙伝執筆の依頼を引き受け、アメリカ東海岸の孤島にあるラングの別荘へとやって来た、ひとりのゴーストライター。
ところが、彼が早速ラング本人と対面して取材と執筆に取り掛かった矢先、ラングの過去の政治活動に対してその合法性の是非を問う一大疑惑スキャンダルが持ち上がり、周囲は緊張した空気に包まれることに。そのうえ彼は、ラングの過去にさらなる重大な秘密があることに気づいて愕然とする-

(WOWOW)


 
このブログでは『袋小路』に続き2作目のレビューとなるロマン・ポランスキー監督作。製作年が半世紀近く違うが、どちらも犯罪を絡めたサスペンスに満ちていて、一気に最後まで観てしまえる。
『袋小路』では、トラブルに巻きこまれる悲しい中年男が主人公だったが、本作では若くて未来のある新進気鋭の作家‘ゴースト’が主人公となる。
 
TheGhostWriter_17最初のゴーストライターが死亡したため、急遽行われた面接でその腕を見込まれ、元英国首相ラングのゴーストライターを受けた作家。この作家の名前は最後まで明かされず、自虐的に自分を‘ゴースト’と紹介する場面があるのみ。
彼はエージェントを介してこの仕事を紹介された。前任のゴーストライターはラングが首相時の補佐官でもあったが、自叙伝完成目前に海で変死。事故とも自殺とも不明なままであった。これを聞いた彼はなんとなくイヤな感じがしたが、報酬がよくエージェントが強く勧めるのもあり、ラングの別荘のあるアメリカ東海岸の孤島へとやって来る。
 
TheGhostWriter_11晴れ間の少ない陰鬱な天気が続く、海に囲まれた孤島-。別荘に滞在するのはラングを始め、妻、秘書などイギリス人が主で、まるで舞台そのものがイギリスの小さな島のようだ。それに、このラングの別荘。孤島の海に面した場所に建っているというのに、自然や休暇とは程遠いまるで要塞のような建物だ。初めてこの建物を見たゴーストも「」と思ったことだろう。
実際、ラングはここで休暇を楽しんでいるわけではないらしい。ボディガードが身辺を警護し、常に連絡が入り、秘書も数人仕事をしており、妻は、、いつも不機嫌な様子の妻のルースもいる。この妻は夫が秘書の一人と愛人関係にあると思い込んでおり、疑っていることを隠そうともしない。
そんな不穏な空気漂う、前任者が変死したという、この場所へはるばるイギリスからやって来たゴースト。居心地がいいはずもなく、ラングへのインタビューも電話のベルで邪魔され、なかなか捗らない。
 
そこへ、過去のラングの政治活動が人権的にも法律的にも問題があると告発されたニュースが入る。イギリスへ戻ればすぐにでも逮捕されそうな勢いに、別荘全体は緊張状態になる。マスコミが押し寄せる中、自叙伝どころではなくなり、ゴーストは反対に時間が出来た。そして前任者が滞在していたという部屋で、ラング自身の話と整合性のとれないものを発見。妙に思った彼は少しずつその謎を追い、事実に迫っていく。

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ユアン・マクレガーという役者さんは、常々感じていたが、独特のほんわかしたムードを醸し出せる人だ。先日記事にした『パーフェクト・センス』でもそうだったが、パニックすれすれの極限状態にあってさえ、そのムードが彼とその周りを覆っていて、緊張感が緊張感を保ったまま和らげられるという、独自のムードが画面から漂う。
TheGhostWriter_10本作でもそれはよく出ている。追っ手から逃げ切るジェイソン・ボーンばりのアクションなシーンがあるが、ボーンが全てを計算して完璧にやってのけていたのに対し、ユアン・マクレガーは旅行鞄をさげたまま、あたふたと必死にやっていたら上手くいった、というような感じ。あ、これはユアン・マクレガーというより、そういう演出なのか。
他にも、せっかく逃げたのに、その後そんな事して大丈夫なのか?と思わせるような軽率ともとれる行動をするが、人のいいユアン・マクレガーなら仕方ないかと思わせる。それがこの人だ。
共演のピアース・ブロスナンやキム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズらがきびきびとサスペンス性を盛り上げ彼をつつくが、ふにゃりとその先が折れるような柔軟性がある。
その彼とヒッチコック作品に使われているようなBGM、アメリカでありながらイギリスの小さな島のような舞台。観る側は、どういう体勢で入り込んでいけばいいのか分からないまま右往左往させられ、自らミステリーの中へとゴーストと一緒に巻き込まれていく。

どうしてアメリカなのか、どうしてボーンの話が出てきたのか。それは観てのお楽しみ。
最後のシーンはヨーロッパ作品らしく、とても情緒があり美しい。
ではまた