『パーフェクト・センス』(2011) - Perfect Sense –

人間の五感が次第に消えて、透明な世界になった時
二人に残されたものは、なんだったのだろう


 

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■パーフェクト・センス - Perfect Sense -■
2011年/イギリス/93分
監督:デヴィッド・マッケンジー
脚本:キム・フップス・オーカソン
製作:マルテ・グルナート、ジリアン・バーリー
製作総指揮:デヴィッド・マッケンジー、キャロル・シェリダン他
撮影:ジャイルズ・ナットジェンズ
音楽:マックス・リヒター
 
出演:
ユアン・マクレガー(マイケル)
エヴァ・グリーン(スーザン)
コニー・ニールセン(ジェニー)
スティーヴン・ディレイン(サミュエル)
ユエン・ブレムナー(ジェームズ)
デニス・ローソン(ボス)
 
解説:
「猟人日記」のD・マッケンジー監督が放つ異色のヒューマン・ラブストーリー。五感がひとつずつ失われていく治療不能の奇病《SOS》が蔓延する世界で、運命に導かれるように出会った料理人の主人公と感染症学者のヒロインの恋を描く。
  (WOWOW)
 
あらすじ:
Perfect Sense_12ある街角で出会ったマイケルとスーザン。ほどなく恋に落ちた二人だったが、ちょうどその時、世界のあらゆる都市で「嗅覚」を失うという病気が発生。一時的なものかと思われたが、徐々に世界中に蔓延、新たな感染症《SOS》と名付けられる。例外なく二人も嗅覚を消失。しかし《SOS》は次なる段階に進み、人類は「味覚」を失いつつあった-


 
Perfect Sense_10ある日、突然悲しくなり涙が止まらなくなる。今までの人生で失ったものが全て目の前に蘇り、その尊さが、愛しさが波のように押し寄せ、途方に暮れる。取り返せない時間にぐるぐる巻きにされ、嗚咽にのどを詰まらせる。喪失感に押しつぶされそうになった時、唐突に気がつく。-何も臭わない
匂いというものは、記憶と一緒に脳に刻み込まれる事も多い。
春の青葉の匂い、雨の後の道路の匂い、秋のキンモクセイ、冬の暖房の匂い。それらの匂いと一緒に、誰もが記憶の中の大事な情景を思い浮かべる。この病は、人々が人生の中で手に入れることが出来たであろう大事なものを奪い取ってしまった。
 
こんな奇妙な症状が世界のあらゆる都市で人々を襲った。感染症学者であるスーザンの研究所にも患者が運び込まれたが、為す術がない。数十人規模だった患者は見る間に増え続け、この奇病は世界中に蔓延。人類は「嗅覚」を失い、この病は《SOS》と名付けられた。
 
Perfect Sense_04一人でないと眠れないという孤独な青年マイケル。付き合う女性が出来てもこれが原因で関係を維持できない。腕のいいシェフであるそんな彼が、勤めるレストランの裏に建つアパートで素敵な女性を見かける。いつものように軽い気持ちで声をかけ、嗅覚騒ぎで早々に閉めたレストランの厨房で食事をともにする。
一緒に夜を過ごした翌朝、マイケルとスーザンは自分たちからも嗅覚が消えたことに気がつく。
 
 
「嗅覚」が無くなったことに慣れ始めた人類を次に襲ったのは、恐ろしいほどの食欲。周りにあるもの、例えそれが普通の食物でなかったとしても、全て口に運び食べ尽くす。数時間もそのような状態が続いた後、ふと我に返る人々。次に無くしたのは「味覚」だった。
Perfect Sense_01考えてみて欲しい。どんなに美味しそうに見えるものでも、味もせず匂いもしないものに対して食欲がわくだろうか?流行っていたマイケルのレストランも客が激減する。嘆き自暴自棄になる店長にマイケルは提案する。味も匂いも奪われてしまったが、まだ食感が残っている。熱い、冷たい、柔らかい、パリパリする-。そういった食感を大事にしたメニューを考えてみては?と。人々は、また普段の生活に戻っていった。無くした物は大きかったが、これからも生きていかなくてはならない。食べなければ生きていけないのだ。
マイケルの店に客は戻った。

    

 
次々と奪われていく人の五感。面白いのが、一つ無くす前に必ず感情の爆発が人々を襲う。それは悲しみ、食欲、怒り、至福-。思えば、この現代で大人であれば「抑えろ」と言われているものばかり。
 人の前で泣きわめくな
 食べ過ぎは自分をコントロール出来ていない証拠
 怒るな。コントロールせよ
 無闇にべたべたするな
 
今まで抑えていたそれらが、爆発したようにほとばしり出た後、無くなっていく五感。いったい人類は何の罪を犯したのだろうか?
 
Perfect Sense_06嗅覚、味覚、聴覚、視覚まで無くなった時、スーザンに分かるのはすぐ横にいて自分を抱きしめるマイケルの体温と息づかい、流れる涙。今までの恋人とはうまくいかなかったマイケルとスーザン。この未曾有の事態の中、無くした物と引き替えに手に入れたお互いを、二人は決して手放さない。
しかし、この後、最後に残る「触覚」が無くなった時、人類は生きていけるのだろうか?真っ暗闇で分かるのは自分の感情だけになった時、その孤独に耐えることが出来るのだろうか?危険に対処出来るのだろうか?どうやって「人」として生きていけるのだろうか?
 
本作はある意味、命を奪うより恐ろしい感染症が人類を襲う物語だが、それを受け入れ、一つずつ乗り越えていく人々の話でもある。どんな困難にも対処法があると思いたいが、五感が失われた人の身体は、単なる感情の入れ物に過ぎないようだ。
 感情
これを表現する第6の何かを見つけないと、とても生きていけそうに思えない。誰かが何とかしてくれるという希望もほとんど無い。全ての人類が五感を失ったのだから。
 
ではまた

 
 

 
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