『ヒミズ』(2012) - himizu –

「生きろ」と、君が言った。

 

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■ヒミズ - himizu -■ 2012年/日本/129分
監督:園 子温
脚本:園 子温
原作:古谷 実
製作:梅川治男、山崎雅史
撮影:谷川創平
音楽:原田智英
 
出演:
染谷 将太(住田祐一)
二階堂ふみ(茶沢景子)
渡辺 哲(夜野正造)
黒沢あすか(茶沢の母)
諏訪太朗(まーくん)
堀部圭亮(茶沢の父)
川屋せっちん(藤本健吉)
でんでん(金子)
吹越 満(田村圭太)
村上 淳(谷村)
神楽坂 恵(田村圭子)
窪塚洋介(テル彦)
光石 研(住田の父)
吉高由里子(ミキ)
渡辺真起子(住田の母)
西島隆弘(YOU)
モト冬樹(てつ)
鈴木 杏(ウエイトレス)
 
解説:
「冷たい熱帯魚」「恋の罪」の園子温監督が古谷実の同名コミックスを、舞台背景を東日本大震災後に設定して映画化した衝撃と感動の思春期ドラマ。愛のない両親によってどん底に突き落とされ自らの未来に絶望した15歳の少年の魂の彷徨を、同じように孤独な少女やホームレスの大人たちとの交流を通して描き出していく。主演は、本作の演技でみごとヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)に輝いた染谷将太と二階堂ふみ。
 (allcinema)
 
あらすじ:
himizu_03友達もいない孤独な毎日を送る15歳の少年、住田(すみだ)。
父親は借金を作って蒸発。川辺で小さな貸しボート屋を営む母親は夜遊びに忙しく、息子のことなどかまってくれない。唯一、彼に好意を抱くクラスメイトの景子は、そっけない住田に話しかけ、ボート小屋の手伝いに押しかけるなど、一方的ではあるが交流を深めていく。
そんなある日、蒸発していた父親がボート屋に顔を出すようになる。金は無いのかと家捜しする父親と前後して、借金を返さない父親を追ってやくざまでもがボート小屋へ。そこから住田の生活は大きく狂い始める-


日見ず(ヒミズ)-
15歳の少年が主役の映画に、こんな非道いタイトルを付けた本作。内容を全く知らずに観始めたが、タイトル通りの、全く非道い状況に置かれた少年の物語だった。
ちなみに「ヒミズ」とは小型のモグラの一種。
 
 
himizu_05中学3年生の住田祐一。川辺の小さな貸しボート小屋で母親と暮らしている。父親は借金を作って蒸発しており、家は貧しく、なんの夢も希望も無い。中学はもうすぐ卒業だが、高校へは進学せずボート屋を手伝うことに決めている。他人からは、どう見えるかしらないが、住田は別に不満もなく、普通の大人になって人生を平凡に過ごすことが出来ればいいと考えていた。
今日も母親はろくに仕事もせず、男を連れて帰ってきた。しかし、そんなのはいつもの事であり、外でラジオをかけて適当に暇さえつぶしておけばいい。話し相手は敷地内にテントを張って住んでいるホームレスの大人達。住田にはそれで充分だった。欲しい物など何も無い。
himizu_04この住田とホームレス達との関係もちょっと変わっている。敷地に住まわせてもらっているので、いい大人達が住田に敬語を使っていたり、かといって住田が偉そうにするわけでもなく自然に接する。ホームレス達は住田の状況をよく分かっており、陰になり日向になり住田を心配し、助けようとする。まるで白雪姫と7人のこびと達のようだ(7人もいないけど)。
このホームレス達には園子温監督『冷たい熱帯魚(2010)』に出演している渡辺哲、吹越満、神楽坂恵などが扮している。本作は東日本大震災後の設定なので、津波の被災者という位置づけだ。その中の1人に絡めて被災地の様子が度々映像として出てくるが、これは本作のエンディングにも関係づけられているのではないか、と思われる。監督からのメッセージだ。

himizu_35そんな住田に子犬のようにつきまとい、じゃれてくる少女、茶沢景子。住田のような無口で感情を表さない男子には、かなり苦手なタイプであると思われるが、意外なことに、ずかずかボート屋までやって来る景子に嫌みがない。一人でしゃべって何かを始め、住田の態度にムカついた時は、河原の石を拾って「これが住田君への呪いの石だからね!ポケットに入れて持っておくから!」なんてことを言う風変わりな女の子。
しかし住田との距離感はきちんと計っており、必要以上に住田陣地に入らない。住田とのおしゃべりでの会話が成立しないと分かれば、ビンタを使ったゲームで会話する。足下ばかりを眺める住田の顔を上に向けるかのように。
(-始めて映画で思ったかもしれない。思春期くらいの女の子に「可愛いな」、と。)
そんな景子の家は裕福だが両親にかなりの問題があり、景子もまた孤独な少女だった。

 
himizu_08ある意味、平凡な毎日を送っていた住田だったが、ある日、蒸発していた父親が現れる。金は無いのかと家捜しする父親。どうみてもチンピラにしか見えない。金が無いと知ってすぐに消えた父親だったが、気分の悪い住田。そんな彼の母親までもが、ある日、男と一緒に家を出て行った。「1人でやっていけ」という言葉とともに。
母親にまで捨てられた天涯孤独の彼に、さらに追い打ちをかけるように、父親の借金の取り立てに現れたやくざ達。600万を作れと言われ崖っぷちに-。
 
himizu_10やくざな人達は相手が子供だろうと容赦ない。「そんな金ねーよ!」と(きちんと)対応する住田をぼこぼこに。それでも住田は負けない。15歳の少年は立ち向かう。「無い物はねーよ!親父に直接言え!」誰が見ても崖っぷちだが、まだ住田は立っていた。
しかし、この後、何食わぬ顔で現れた実の父親の言葉が住田を徹底的に打ちのめし、壊してしまう。「普通の大人=立派な大人」と考えざるを得なかった境遇の彼が、とうとう壊れてしまう。
その原因は住田にも意外なことだったが「拒絶」だった。


 
本作は本筋から言えば、映画なんかでよくある話なのかもしれない。しかし監督による、出てくる大人の極端なまでのクズっぷりの味付けに、観ているこちらにかなりの怒りとフラストレーションが与えられる。壊れた住田の行動に、「いいから、そんなヤツやってしまえ」と思わず応援してしまうほどだ。
himizu_18がしかし、監督はそれを許してくれない。
終盤の景子の言葉に、観客は自分のクズっぷりに気がつく。
景子の言葉にどんどん気持ちが浄化され、空気が澄んでいくことに気づかされる。川辺で土砂降りの雨の降ることが多かった物語が、景子によってすっかり晴れ渡り、今までの全ての台詞が嘘っぽくいかに偽善に満ちていたかを確認させられてしまう。
 
「がんばれ」
 
ではまた

 

 

染谷 将太(住田祐一)
himizu_219歳の時に映画『STACY』で活動を開始し、子役時代から様々なジャンルの映画、ドラマで活躍。2009年(平成21年)、映画『パンドラの匣』で長編映画初主演。『ヒミズ』での最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞受賞は、日本人初となる。
 
■今後の主な公開作
 ・恋に至る病(2012年10月13日公開予定、マジックアワー)
 ・悪の教典(2012年11月10日公開予定、東宝)
 ・永遠の0(2013年公開予定、東宝)
 ・ストロベリーナイト(2013年1月26日公開予定、東宝)
 ・インターミッション(2013年2月23日公開予定、「インターミッション」製作委員会)
 ・すーちゃん まいちゃん さわ子さん(2013年3月2日公開予定、スールキートス)
 ・千年の愉楽(2013年初春公開予定、若松プロダクション / スコーレ)
 ・リアル〜完全なる首長竜の日〜(2013年初夏公開予定、東宝)
 

1992年生まれの彼。ちょっと驚きました。マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞も納得できる。特に叫んでいる時の演技が最高だった。若い時のディカプリオを彷彿とさせますねー(ウエカラ。