『ミッション: 8ミニッツ』(2011) - Source Code –

ロボット相手に3年間、もくもくと任務をこなす孤独な男を主役にした長編デビュー作『月に囚われた男(2009)』から2年。ダンカン・ジョーンズ監督期待の第2作が本作『ミッション: 8ミニッツ』。今回も孤独に任務を遂行する男が主役のSFとなっている。

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■ミッション: 8ミニッツ - Source Code -■
2011年/アメリカ/93分
監督:ダンカン・ジョーンズ
脚本:ベン・リプリー
製作:マーク・ゴードン、フィリップ・ルースロ、ジョーダン・ウィン
製作総指揮:ホーク・コッチ他
音楽:クリス・ベーコン
撮影:ドン・バージェス

出演
ジェイク・ギレンホール(コルター・スティーヴンス)
ミシェル・モナハン(クリスティーナ・ウォーレン)
ヴェラ・ファーミガ(コリーン・グッドウィン)
ジェフリー・ライト(ラトレッジ博士)
マイケル・アーデン(デレク・フロスト)
ラッセル・ピーターズ(マックス・デノフ)

解説:
デビュー作「月に囚われた男」で注目を集めたダンカン・ジョーンズ監督の記念すべきハリウッド進出第1作となるサスペンス・アクション。列車爆破事件の犯人を見つけるべく、特殊な装置で爆発8分前の乗客の意識に入り込み、事件の真相に迫っていく主人公を待ち受ける衝撃の運命をスリリングに描く。主演は「ドニー・ダーコ」「ブロークバック・マウンテン」のジェイク・ギレンホール、共演にミシェル・モナハン、ヴェラ・ファーミガ、ジェフリー・ライト。  (allcinema)

あらすじ:
Source Code_12列車の中で突然目を覚ましたコルター・スティーヴンス。どこへ向かう列車かも分からないまま、前に座っている見知らぬ女性に‘ショーン’と話しかけられ、当惑する。窓に映る自分の顔も何かおかしい。そうしているうち、列車は横を走る貨物車を巻き込んで大爆発を起こす。
自分の名を呼びかける女性の声に、再び意識を取り戻した彼。そこは見知らぬ狭いカプセルの中だった-


前作の舞台が静かな月でたんたんと時間が進む作品であったのに対し、今作はシカゴを走る爆弾を積む列車が舞台。爆発を阻止するために8分間しか無く、時間との戦いが続いて息をつかせる暇もないスリリングな設定。

Source Code_08ハッと目を覚ましたコルター・スティーヴンス。
当たりを見回すと、そこは朝の通勤列車の中。なぜ自分がここにいるのか、どこへ向かっているのか記憶は無かったが、ホームの標識からシカゴ市内行きの列車と分かる。前に座っている女性が親しげに話しかけてくるも、記憶に無い。‘ショーン’と呼びかけられ、自分は‘ショーン’ではないと答えるが不審な顔をされるばかり。
落ち着け、と自分に言い聞かせるが、窓に映る自分の顔が他人のもので、持っているIDも他人ショーン・フェントレスのものだと知った時、列車は大爆発を起こし、巻き込まれる。

Source Code_15次に目を覚ましたのは、狭く薄暗いカプセルの中だった。頭がくらくらし、混乱する彼に‘スティーヴンス大尉’とモニター越しに呼びかけていたのは、軍服を着た女性グッドウィン。確かに自分はアメリカ陸軍大尉スティーヴンス。しかしアフガニスタンで戦闘ヘリを操縦し、軍事行動中だったはず。わけを彼女に問いかけるが、はっきりした返事が返ってこないばかりか、「犯人は分かったか?」「爆弾の型式は?」と矢継ぎ早に質問される。

こちらの質問になんとか答えてもらって分かったのは下記の3点。
 ・アフガンでの戦闘から既に2ヶ月経っている。
 ・ここがどこかは軍事機密で言えない。
 ・今の新しい任務は列車を爆破したテロリストを特定すること。

「一体どういうことだ?」と問いただす間もなく、また彼は飛ばされた。
8分後に爆発する列車に乗っている‘ショーン’の中へ。

Source Code_27この任務の核である転送方法など謎は多いが、それを考えている時間は無い。爆弾を探すスティーヴンス大尉は洗面台の天井通気口の中にそれを見つける。しかし解除の仕方が分からない。彼はそのまま爆発を待ち、再びカプセルへと戻る。
何度目かの転送の後、彼はようやくこの転送を立案し実現させたラトレッジ博士をカプセルのモニター越しに捕まえることが出来た。彼に問いただし分かったこと。

  • この転送は量子力学の観点に立った新しいプログラム
  • 人間の脳は死後も一定期間活動し、その活動状態が保存される
  • 最後の8分間の活動は記憶することが出来る
  • 死後も活動する神経回路と8分間の記憶を一体化したのがこのプログラム
  • これにより平行世界へのアクセスが可能になる

全部を理解できたわけでは無いスティーヴンスだったが、予告されている連続テロを阻止するため、人々の命を救うため、彼は何度も過去に飛び、テロリストの特定に全力を注ぐ。
しかし博士の説明にある「死後」という言葉。
「死後」になったのは誰なのか?既に爆発のあった列車に乗っていたショーンの事なのか?
8分間は誰の時間なのか?
そして爆発前の列車の爆弾を解除すれば、列車の人々は助かるのか?過去を変えることは出来るのか?


物理が一番苦手だった自分には、博士の説明でなぜ転送できるのか理解できない..。
博士が言うにはこのプログラムはタイムマシンではないという。あくまでも平行して存在するもう一つの世界に飛び、犯人を特定して、自分達の世界における次の爆発を阻止するのが目的だと。
スティーヴンスも疑問に思う。もう一つの世界には違う自分がいて、違う生活をしているのか?と。
しかし彼に疑問を解く時間は無い。

Source Code_34こういった転送を何度か繰り返すうち、度重なる転送と結果を得られず疲れ切った彼と共に、カプセルは最初の整った状態から徐々に崩れだし、ケーブルが剥き出しになってばらばらに壊れていく。投げやりになり、もう無理だと思い始めた彼に、やがて一筋の可能性が示される。その時、カプセルは元に戻り、彼自身の顔が生き生きと輝き出した。

他人に操られ生かされているのではなく、自分の意志で今後の道を選びとった時、人はその存在に意味を持ち始めると監督は訴えかける。これは監督の前作『月に囚われた男』でも描かれていた事だったな、と思い出した。

ではまた

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■監督ダンカン・ジョーンズ


Duncan_Jones_and_David_Bowie1971年、デヴィッド・ボウイ(本名:デヴィッド・ロバート・ジョーンズ)と最初の妻である元モデルのメアリー・アンジェラ・バーネットの元にケント州で生まれる。
9歳の時に両親が離婚。親権は父であるデヴィッド・ボウイの元に渡り、母とは休日に会えるだけであった。14歳からスコットランドの名門寄宿学校、ゴードンストウンに入学した。その後、ウースター大学で哲学を学び、ヴァンダービルト大学で博士号を取得する予定であったが、ロンドン・フィルム・スクールで映画制作を学ぶことを選んだ。(Wiki)
画像原典:David Shankbone

監督作

  • 月に囚われた男 -Moon(2009)
  • ミッション: 8ミニッツ -Source Code(2011)
  • ウォークラフト -Warcraft (2016)
  • Mute/ミュート -Mute (2017)

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コメント

コメント一覧 (8件)

  • ミッション:8ミニッツ

    製作年:2011年
    製作国:アメリカ
    原題:Source Code
     
     
    乗客が全員死亡した列車爆破事件を解決するための極秘ミッション。
    犠牲者が死亡する“8分前”の意識に入り込み犯人を見つけ…

  • おはようございます。
    こちらこそTBありがとうございました。
     
    >最新の量子物理学での時間旅行
    私もよく分かってないのですが、これは2つの宇宙が相互作用しながら実在する、といったような感じでしょうか。
     
    2つの宇宙は基本的には「同じ」と考えていいんですよね。
    スティーヴンス大尉は作品内ではギレンホールの顔でしたが、実際は「ショーン」。スティーヴンスの働きで列車事故は起こらずショーンは元通り生きている。しかし、もう一つの宇宙の思惑から中身はスティーヴンスに入れ替わった。
    犠牲はショーンの中の人のみですんだ。しかしスティーヴンスの働きが無ければ、結局列車事故は起こり死んでいた。だからショーンの犠牲と言うよりは、他の多くの人の命が救われる歴史に切り替わった、ということでしょうか。
     
    でも、この作品はこんな無粋なことをどうこう考えていたら面白さが半減されるように思います。
    >自分の意志で今後の道を選びとった時、人はその存在に意味を持ち始める
    すみません。↑これは、監督の言葉ではありません..。監督が言いたいのはそうなのかな、と私が感じただけで..。
    ややこしい書き方で申し訳ないです。

  • TBご承認いただきありがとうございました。
     
    この映画、非常に小気味良いSFで大好きなのですが、ボクの周りでは不評です。これまでのタイムトラベルものってのは(たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)過去の因果がどう未来に影響するのかってのが定番なのですが、本作にはそれがなくわけわからんってのが理由。
    この作品は最近の最新の量子物理学での時間旅行の概念である並行宇宙を描いているので、新しい選択の後には新しい世界が展開されてしまうのですよね。。。確かに感覚的によくわからない人も多そうだし、ツマラナイっていう人も分かるですよ。
    それをどう説明すべきかなと思ってましたが、「他人に操られ生かされているのではなく、自分の意志で今後の道を選びとった時、人はその存在に意味を持ち始める」っていう監督の言葉がしっくり来ました。難しい話ではなく、新しい未来をその意思で勝ち取ったおハナシなのですね。うーんだから面白いのだなぁ。
     
    またよらせていただきますね。映画ブログ書いているお仲間さんとして今後ともよろしくお願いします。

  • コメントありがとうございます。
    昨夜は睡魔に負けてしまい、お返事遅くなりました。
     
    >難解すぎない映画
    確かに。考える暇を与えず、次々と話が展開して、あの結末まで一気にいくので
    「面白かったー。良かったな、主人公よ」という爽快感で見終える事ができますよね。
    結果的にいらいらする「悪い人」も消えてしまったし。
     
    >実在について
    おー、これは!
    ぱっと思いついたのが「バトルスター・ギャラクティカ」です。

  • この映画好きですね~
    量子物理学とか難しそうな理論を用いながら、
    難解すぎない映画になっているのに感動しました。
     
    最後の映画的解決もよかったですし、実在について考えさせられるところとかたまらなく好きなテーマでした。

  • しろくろshowさま、 こんばんは
    いつもありがとうございます。
     
    この監督の前作がお気に入りなので、すごく観るのを楽しみにしていた作品です。
    まさか、こんな内容だとは思いもよらず。
    考えれば考えるほど混乱しますよね。
    でも結末は単純に「良かったねー」と拍手を送りました。
     
    >ビル・マーレイ主演の「恋はデジャヴ」
    去年の12月にBS-TBSで放送があったみたいです。
    軽いロマンスコメディだと思っていたのですが、面白そうですね!
    どこかで、放送予定を見かけたら早めに何らかの形でお知らせしますね。
     
    >自分の意志で今後の道を選びとった時、人はその存在に意味を持ち始める
    これは、よく気をつけないと単なるわがまま者だとか、自分勝手とかいわれたりもするんです..。
    生きていくって難しい

  • こんばんはー。
     
    公開当時にあのオチを何度も何度も租借して必死で合点のいく答えを探してみましたが、僕には見つかりませんでしたねー・・・(ーー;)
     
    なのになんでこの映画こんなに面白かったんだろうって後から考えれば考えるほど不思議な作品だったと思います(最初の30分があまりに予想外な流れなのも良かったのかも。導入部はほとんどヒッチコックの「見知らぬ乗客」みたいな始まり方だったのが急にSF方面に舵を切られたのは気持ちの良いサプライズでした)
     
    そういえば少し前に町山智浩さんが”この映画を解くにはビル・マーレイ主演の「恋はデジャヴ」を見たほうが良い"と仰っていたので見てみたいんですけどねー、オンエアがないなあ・・・
     
    >自分の意志で今後の道を選びとった時、人はその存在に意味を持ち始める
     
    今回の記事を拝見してこの部分になるほどなあと大きく頷いてしまいました。うむー、着眼点がすばらしい。

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