『エンジェル ウォーズ』(2011) - Sucker Punch –

戦う者の人生は、戦わぬ者の人生よりはるかに美しい。武器は揃っている。さぁ、戦って

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■エンジェル ウォーズ - Sucker Punch -■
2011年/アメリカ・カナダ/120分
監督:ザック・スナイダー
原案:ザック・スナイダー
脚本:ザック・スナイダー、スティーヴ・シブヤ
製作:ザック・スナイダー、デボラ・スナイダー
製作総指揮:ウェスリー・カラー、クリストファー・デファリア他
音楽:タイラー・ベイツ、マリウス・デ・ヴリース
撮影:ラリー・フォン

出演
エミリー・ブラウニング(ベイビードール)
アビー・コーニッシュ(スイートピー)
ジェナ・マローン(ロケット)
ヴァネッサ・ハジェンズ(ブロンディ)
ジェイミー・チャン(アンバー)
カーラ・グギーノ(ベラ・ゴルスキー博士)
オスカー・アイザック(ブルー・ジョーンズ)
ジョン・ハム(大富豪 / 医師)
スコット・グレン(ワイズマン/賢者/バスの運転手)

解説:
「300 <スリーハンドレッド>」「ウォッチメン」のザック・スナイダー監督が、5人のセクシー美女を主人公に描く痛快ファンタジー・バトル・アクション大作。全てを奪われ精神病院送りとなった少女が、そこで出会った4人の美女と共に自らの運命を変えるため、空想世界を舞台に壮絶な闘いを繰り広げるさまを、ザック・スナイダー監督ならではのこだわりのヴィジュアル表現で描き出す。

 (allcinema)

あらすじ:
Sucker Punch_009妻を死に追いやったものの遺産を相続できないと知った醜悪な継父。猛り狂った継父が原因で妹を死なせてしまった少女ベイビードールは、継父の策略で精神病院へと送られ、ロボトミー手術を受ける手はずまで整えられてしまった。
恐ろしい手術を何とか回避して逃げ出すために空想世界に飛び込んだベイビードール。そこには一人の男が待っており、「さぁ武器は揃っている。自由を得るためには自ら戦え。」と伝えられ-

原題: Sucker Punchは「不意打ち」の意


アリス イン ナイトメア」というゲームをご存じだろうか。
2000年10月6日にエレクトロニック・アーツより発売された3Dホラーアクション・アドベンチャーゲームで、日本語版1作目は2001年1月にWindows版PCゲームとして発売された。
元になるお話はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』で、これらの後日談として描かれている。
続編「アリス マッドネス リターンズ」は2011年に満を持して発売された。こちらはPS3、XBoxにも移植。

アリス イン ナイトメア/アリス マッドネス リターンズ

火事で愛する家族を失ったアリスは精神が崩壊し、精神病院に入院している。
死んだように日々を過ごすアリスだったが、白いうさぎの声に導かれ、
残忍なハートの女王が支配する不思議の国へと入り込む-。

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雰囲気は原作の世界観を元にホラー要素を加えたアレンジが施され、ディズニーアニメーションのアリスのような明るい雰囲気は皆無。ナイフなどを武器におどろおどろしいトランプ兵や公爵夫人と戦うアリス。血が飛び交い、身体が切断されるなどの描写のため、R指定を受けているゲーム。

本作『エンジェル ウォーズ』は、監督によると「マシンガンを持った『不思議の国のアリス』」ということだが、「アリス イン ナイトメア」とした方がより分かりやすく説明できると思う。
邦題の‘エンジェル ウォーズ’や解説にあるような‘セクシー美女’から想像されるものとは、ちょっと違う。もっと純粋で、自由を得るために大人を手玉に取った、というか取ろうとがんばる少女達の物語だ(少女でいいのかな..?)。

今回はビジュアル重視の画像レビューです。未見の方はご注意下さいますようお願いいたします。

    

現実世界
継父によって母親を死に追いやられ、幼い妹と二人きりになってしまった少女ベイビードール。母親の遺書に「全ての遺産は娘二人に」とあったため、怒り狂った継父は殺さんばかりに姉妹を追い詰める。
妹を助けるためにベイビードールが継父に向けて放った銃弾。しかしそれが妹の命を奪ってしまった。継父はここぞとばかりに彼女を精神病院に隔離し、金の力でロボトミー手術を受ける手はずを整えてしまう。
手術まで5日。その話を聞いていたベイビードールの意識は、突如、空想の世界へと跳ぶ-。
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空想世界の入り口:クラブ(売春宿)
ショーを売り物にしている、クラブとは名ばかりの売春宿に連れてこられたベイビードール。
オーナーはブルーと呼ばれる男。新人は「大富豪」と呼ばれる紳士に供されるルールがある。見世物であり、品定めの場でもあるダンスのレッスン室に連れてこられたベイビードール。マダム・ゴルスキーに突然踊ってみるように言われ集中していると、音楽に乗せ身体が動き出し、次のステージへと跳ぶ-。
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ステージ1:山寺
跳んだ先は雪深い山寺。そこには住職ならぬ一人の男がいた。
「何か用か」と尋ねられ「出口を探している」と答えるベイビードール。男は自由への切符を手に入れるためには5つのアイテムが必要だと言う。
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そのアイテムとは「地図、 、 ナイフ、 、 最後の一つは自分で考えろ」。
そのアイテムを手に入れるためには、自らが武器をとり戦わなくてはならないと。さぁ、武器はここに揃っている。戦え。武器をとれ
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この山寺のステージでは、戦いをそそのかす「男」が現れる。
その男は自分の欲しい物は自分の力で手に入れろ、と指南する。このステージでの敵は日本の武士のようなモンスター。ほとんどゲームの格闘シーンのようで見応えがある。監督はゲームではない、と言っているようだが..。
この女子もがんばっている。

死闘を終えたベイビードールは武器を手に入れ、クラブへと戻る。

ステージ2:戦場
武器を手に入れたベイビードールは売春宿脱出の仲間をクラブで見つけ、アイテムを探すための戦いを一緒にやっていくことになった。音楽と共にダンスを始めるとアイテムを探すステージへ移動できることを確認。今回のステージより、仲間4人と共に空想空間へ跳ぶ。
今回のステージは第2次世界大戦の(ような)戦場。ゾンビと化したナチスの持つ地図を手に入れることがミッションだ。
例の男からの助言は力を合わせろ
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ステージ3:塔
今回のミッションは、ウルク=ハイが守るドラゴンの子供から2つのクリスタルを盗むこと。2つのクリスタルをこすることでが生まれる。今回の助言は守れもしない約束はするな
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誰がなんと言っても、これは『ロード・オブ・ザ・リング』のあの場所ですよね。敵もウルク=ハイですし。しかし本当の敵はウルクではなく、大物が待っている。

ステージ4:列車
ほとんど『チャーリーズ・エンジェル』のようになってきた。
今回、男からのミッションは爆弾が仕掛けられた暴走列車に乗り移り、爆弾魔ロボットをやっつけ爆弾を解除し、ナイフを手に入れること。
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さて、アイテム3つ目まできましたが、内容紹介はこの辺までにしておきましょう。

この作品は上記の通り、いくつものステージに分かれ、それぞれに異なるミッションが遂行されるが、どれも見応えがあり目が釘付けになる。スナイダー監督らしく、どんな小さなシーンであっても力強く、映像と音楽が一体になって迫ってくる。
しかも、派手シーンばかりがいいのではない。
ゆっくり動くカメラを追っていくと、あれっ、と思うような仕掛けがいくつか仕込まれている。不思議の空想世界なので、何が起きてもおかしくはない。

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本作ではアイテムの他にも音楽が重要な役割を担っている。曲に合わせてダンスが始まると共に、空想世界へ飛び立つ。その力強いシーンを盛り立てている。
異世界の雰囲気が漂う序盤のベイビードールがカバーする「Sweet Dreams (Are Made of This)」やビョークの歌う「Army of Me (Sucker Punch Remix)」、クイーン「I Want It All / We Will Rock You Mash-Up」など、音楽センスは抜群だ。
評論家による映画作品そのものの評価はよくないらしいが、サウンドトラックはチャート入りしている。

監督 ザック・スナイダー
ZachSnyderMarアメリカ合衆国ウィスコンシン州グリーン・ベイ出身。
ロンドンのヒーサリーズ・スクールで絵画を学び、カリフォルニア州パサデナの名門アート・センター・カレッジ・オブ・デザインにおいて大胆な映画制作スタイルを確立する。ミュージック・ビデオやCMのディレクターとして数多くの賞を受賞。『ゾンビ』のリメイク作品『ドーン・オブ・ザ・デッド』で長編映画デビュー。妻のデボラ・スナイダーと共に、自身の製作会社クルエル・アンド・アンユージュアル・フィルムズを設立した。(Wiki)
■主な作品
・ドーン・オブ・ザ・デッド -Dawn of the Dead (2004) 監督
300 〈スリーハンドレッド〉 -300 (2007) 監督・脚本
・ウォッチメン -Watchmen (2009) 監督
・ガフールの伝説 Legend of the Guardians: The Owls of Ga’Hoole (2010) 監督
・マン・オブ・スティール -Man of Steel (2013) 監督

『300』が大好きで、公開時は、うはうは言いながら映画館に駆け付た管理人です。
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エミリー・ブラウニング(ベイビードール)
Sucker Punch_103オーストラリアの女優。
1998年にジュディ・デイヴィス主演のテレビ映画『The Echo of Thunder』でデビュー。2001年の『The Man Who Sued God』で映画デビュー。翌年公開の『ゴーストシップ』で注目を集める。
2005年に『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』のPRで共演のリアム・エイケンとブラッド・シルバーリング監督と共に来日した。また、同作品で放送映画批評家協会賞の若手女優賞にノミネートされた。(Wiki)
■主な出演作品
・ゴーストシップ -Ghost Ship (2002)
・黒の怨 -Darkness Falls (2003)
・レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
– Lemony Snicket’s A Series of Unfortunate Events (2004)
ゲスト -The Uninvited (2009)
・スリーピング ビューティー/禁断の悦び -Sleeping Beauty (2011)

監督はベビイドール役にアマンダ・セイフリード(『赤ずきん』)を希望したそうだ。結果オーライかと思う。


自分の人生を生きていくことをすっかりあきらめ、いいなりになっていた彼女達が、自ら立ち上がり武器を持ち、自由を得る戦いに赴くことを決意する。しかし、勧善懲悪の単純なサクセスストーリーではない。
ベースになっている「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」や、似ていると感じる「アリス イン ナイトメア」や『アリス・イン・ワンダーランド(2010)』も同じく、自分の意志で進む道を追求していく物語だ。
本作『エンジェル ウォーズ』の彼女達も、自分の道を切り開き、どんな結果になろうとも歩き続けて行く。
その後ろ姿は力強い。

ではまた

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コメント

コメント一覧 (8件)

  • エンジェル ウォーズ 【2011年製作:映画】

    「300 <スリーハンドレッド>」のザック・スナイダー監督作品ということで、
    映像美は素晴らしかったですねぇ。
     
    というわけで、
    「エンジェル ウォーズ」といういかにもB級映画テ

  •  映画は十人十色。ある人が傑作と賞揚しても別の人は駄作と扱き下ろす。100%の人が支持する作品や100%の人が批難する作品を見つける方が至難の技、というよりそんな作品は存在しません。
     
     そういうものですから、作品は扱き下ろす事はあっても人様のレビューや趣向は否定しません。
     
     どうぞ、お気になさらずに。

  • 晴雨堂ミカエルさま
    こちらにもコメントをありがとうございます。
     
    闘う美女がお好きなんですね。私もです。
    いろんなスタイルでの戦いはありますが、本作のようなまだ少女の面影が残るような美女達が、
    武器を持ってがっつり戦闘するシーンにはほれぼれします。
     
    そういった意味で『300』も好きな作品です。
    実在する民族にモンスターを登場させ、その王に対しても侮辱するような表現があったとかで
    問題視する意見も多いそうですね。
    私は単純なので、作り物として楽しませてもらいました。
    もし気分を害されたのであれば、お詫びいたします。
     
    またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

  •  「300」よりも断然本作が素晴らしいと思います。
     
     私は反米アンチ基督なので、残念ながら「300」には激怒してしまいました。

  • しろくろshowさま
    こんんちはー。いらっしゃいませ。
    コメントありがとうございます。
     
    『エンジェル・ウォーズ』映画館で観られたんですか!?
    うらやましいです。自宅テレビで見終った後、すごく後悔しました。
    ザック・スナイダー特集でもう一度『300』とこれをやってくれるところはないかな、と思うほどです。
     
    >リズムが弾けきらないという欠点
    そんな評価があったんですねぇ。
    でもあのバトルシーンだけの作品だと、どうなんでしょう。
     
    >どんな場面でも意味なくカッコ良い
    全く同感です!
    うちでもしばらく"this is Sparta~!!"流行ってましたよ。
    (最近でもいろんなバージョンでちょくちょく。もちろん蹴り入り)

  • ザック・スナイダー、いいですよねー。
     
    ここ最近の監督さんじゃ今いちばん趣味が合う人です。
    今のところまだハズレに当たってません(^_^;)
     
    「300」の時はスクリーン見ながら"this is Sparta~!!"と自分も叫びたくなったほど・・・(ーー;)
     
    この「エンジェル・ウォーズ」も公開時の評判は頗る悪かったけど楽しかったなあ。。。
     
    内容的には激しい妄想アクションの後のドラマ部分がかなり小休止な感じになってしまって映画そのもののリズムが弾けきらないという欠点もありましたが、それらをさっ引いても気持ちの良い映画だったなと思っています。
     
    とにかくこの人の映画ってどんな場面でも意味なくカッコ良いところが(^0^;)すごいなって思うんですよ(あと曲の入れ方も抜群に旨いなと・・・)今そんな映画撮れる人ってなかなかいませんよね。

  • ネクサス6さま
    こんにちはー。コメントありがとうございます。
     
    そうなんです。私もハレンチ系B級だと思い込んでいて録画したまま3ヶ月もほったらかしていたんです(なぜ録画?)。
    観てびっくり。
    中途半端な『アリス・イン・ワンダーランド』よりも、この作品の邦題に「アリス」を使って欲しかったと思ってます。
     
    >ゲーム「アリス イン ナイトメア」
    発売時に予約を入れて、指折り数えて配達されるのを待っていた記憶があります。
    記事内に貼っているTrailerを何回も見たりしながら。
    ダークファンタジーのゲームを「アリス」で作ったところが素晴らしい!
    ぃや、実際プレイしたのは家族の一員でして、私は横でやいやい言っていただけなんですが..。
    公式サイトでは体験版なんかも置かれています。
     
    この「アリス イン ナイトメア」の映画化の話もあったらしいのですが、いまだ実現はしていないようです。

  • いかにもB級映画ぽいタイトルで、間違いなくDISCUSに予約を入れていると思う作品です。
    まさかザック・スナイダーの作品だったとは、タイトルとジャケットだけで予約ボタンを押しているのがばれてしまいます。
     
    ゲーム「アリス イン ナイトメア」もいつかプレイしようと思っていた作品で、まさかこちらのブログでタイトルが紹介されるとは思いもしませんでした。
    相変わらず良いところをついてきますなぁ。

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