『フェノミナ /インテグラルハード完全版』(1984) - Phenomena –

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すごく久し振りに観たから、どこが4分長いのか分からなかった 今となればホラーというよりダリオ・アルジェントらしいサスペンス。一般的に持っているスイスのイメージとむごたらしい少女連続殺人事件の組み合わせが面白く、“昆虫”の力を借りて可愛らしいジェニファーが事件を解決していく様子も不思議な雰囲気。
 

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■フェノミナ /インテグラルハード完全版 – Phenomena -■
1984年/イタリア/115分
監督:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント 他
製作:ダリオ・アルジェント
撮影:ロマノ・アルバーニ
音楽:ゴブリン、サイモン・ボスウェル

出演:
ジェニファー・コネリー(ジェニファー)

ドナルド・プレザンス(マクレガー教授)
ダリラ・ディ・ラザーロ(校長)
ダリア・ニコロディ(ブルックナー)
フェデリカ・マストロヤンニ(ソフィ)
パトリック・ボーショー(ガイガー警部)
フィオーレ・アルジェント(ベラ)
タンガ(チンパンジーのインガ)

解説:
スイス郊外にある不気味な雰囲気を漂わす寄宿舎を舞台に虫と交信する事のできる少女をめぐって起きる殺人事件を描いた、奇才アルジェントによるホラー・ムービー。死体やウジ虫の浮かぶプールに落ちるJ・コネリーの熱演ぶりに圧倒される。97年に「インテグラルハード完全版」としてリバイバル公開された。(TSUTAYA)
 
あらすじ:
父親の仕事の都合でスイスの寄宿学校に入れられたアメリカの少女ジェニファー。昆虫と交信できる能力を持つ彼女は、最近このあたりで起きている少女失踪事件捜査を手伝う昆虫学者マクレガーと親しくなる。そうするうち、ジェニファーのルームメイト、ソフィが惨殺され、彼女とマクレガーは昆虫を使って犯人を捜そうとするが ―

英題:Creepers


Phenomena_37ほとんど内容を忘れていたから、とっても新鮮に観ることが出来た。それでも覚えていた初っ端の女の子ベラ(監督の娘さんが演じている)のシーン。
綺麗なスイスらしい風景の中で、バスに乗り遅れた少女がポツンと1人。あー、そうかぁ。自然が一杯のスイス(とは限らないけど)の郊外では観光バスに乗り遅れたら次のバスはなかなか来ない。バスどころか車も全然通らなくて家もポツ、ポツと遠くにあるだけ。
綺麗な風景にホラーらしくないな、と思いつつも、そこに風がさぁーっと吹いて思わずゾクッとする場面は、これから起こる恐ろしいことを予想させる。音楽も不安をあおり、案の定、彼女は一番行ってはいけない場所へ アーア
 
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画面には映らない犯人が持つ尖ったハサミ、顔に突き刺さる割れた窓。でも彼女は最初の犠牲者ではなくて、風光明媚なこのあたりチューリッヒ郊外では少女が何人も行方不明に。
映画の中で何度か出てくるんだけどチューリッヒは「スイスの魔境」と呼ばれているらしい。何故か。それはアルプスの山を越え、暖かくて乾いた下降気流となった風が吹き下ろす“フェーン現象”によるもので、人によっては気圧の変化で激しい頭痛に見舞われたりして急に体調が悪くなるからだとか。抗えない自然によって人間が苦しむ故に「魔境」と呼ばれているんですね。
で、この魔境には魔神のような少女連続殺人鬼が。
 
Phenomena_28そんな所とも知らず、人気俳優の父親の都合でこの地にある寄宿学校に入れられたジェニファー。昆虫と交信できる彼女は学校の女子に気味悪がられたりするものの、ルームメイトのソフィとは仲良しに。でもフェーン現象のせいなのか、最近出ていなかった夢遊病が再発。眠りながら歩いている時に、殺人を目撃してしまう。でも覚えていない。
そんな事は殺人鬼には分からないから、ジェニファーは殺人鬼に付け狙われることに。
 
なのにですよ そんな事とはつゆ知らず、彼女は知り合った昆虫学者と相談して彼女の能力を使った犯人捜しを始めてしまって、殺人鬼の思うつぼに
 
羊たちの沈黙(1991)』でも珍しい昆虫の生態が犯人を追い詰める、といった描写があったけれど、この映画では「人間の死体に付く8種類の昆虫」がキーパーソンに。この8種類の昆虫の幼虫である蛆は順番に15日ずつ死体に群がる。だから付いている蛆の種類で、その死体がいつ死んだのかということが分かる。で学者が目を付けたのがその中の一種「サルファゴス」という蠅。この蠅君とジェニファーがタッグを組んで、おそらく何体もの少女の遺体を保存している家を探そうということに。
 
↓この子がサルファゴス君。こうして見ると、案外綺麗。
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2人の探偵は冒頭のベラが迷い込んだ家を特定するものの、中はもぬけの殻。犯人を特定するに至らなかった。そうこうするうちに、新たな犠牲者が。ジェニファーは学校を飛び出しアメリカに帰ろうとするのだが―


Phenomena_20珍しく他作に比べてアルジェントの「」があまり使われていない。
スイスの透き通った風のような青味かかった画面に、長い黒髪でクラシックな面持ちのジェニファー・コネリーの暖かさ。体温を感じない昆虫たちと、生きるために死体をむさぼる蛆の描写(蛆は『サスペリア』でもたっぷり出てきて、蛆を怖いと思うようになったのはもしかしてアルジェント作品のせいなのかな?)
それらにゴブリンの女性の悲鳴のような音楽と、唐突に流れるヘビーメタルは観ている者を混乱させ、苛立たせる。
 
本作で驚いたのは、電話機を必死でたぐり寄せようとするシーンは『不意打ち(1964)』を、衝撃のラストは『13日の金曜日(1980)』を思い出させたことだ。相変わらず女性を痛めつける事が中心だけど。