『悪魔の赤ちゃん』(1974) - It’s Alive! –

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まだ観てなかったシリーズ続きますー。これは、ホラーというよりサスペンス・ドラマですね。可愛い息子が罪を犯してしまった。その時、両親はどう対峙するのか。親として、人間としてどうあるべきなのか。犯人が子供であるとき警察はどう対応するのか。周りの人が試される。しかもそれが生まれたての赤ちゃんでモンスターだったら!?
 
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■悪魔の赤ちゃん - It’s Alive! -■

1974年/アメリカ/91分
監督:ラリー・コーエン
脚本:ラリー・コーエン
製作:ラリー・コーエン
製作総指揮:ピーター・パクストン
撮影:フェントン・ハミルトン
音楽:バーナード・ハーマン
出演:
ジョン・P・ライアン(フランク・デイヴィス)
シャロン・ファレル(ルノール・デイヴィス)
ジェームズ・ディクソン(パーキンス警部補)
ウィリアム・ウェルマン・Jr(チャーリー)
アンドリュー・ダガン(教授)
ガイ・ストックウェル(ボブ・クレイトン)
ダニエル・ホルツマン(クリス・デイヴィス)

解説:
平凡な夫妻の間に誕生した新生児は突然変異の怪物だった―。
ただ単に赤ちゃんを怪物視して描いたモンスター映画ではなく、前触れのない厄災に見舞われた夫婦の焦燥や世間との軋轢を主眼にした異色の恐怖映画。特にクライマックスの、傷ついた赤ん坊と対峙した父親の感情の変化は、この異様な作品の中で奇妙にドラマチックな感動をもたらす。劇中、フランケンシュタインというのは科学者の名ではなく怪物の名前だと思っていたと語る父親の台詞と原題が示すように、これは“フランケンシュタイン”の寓話–忌まわしき物とそれを作った者との愛憎–の再現であろう。ラリー・コーエンはB級映画の佳作を作り続けている監督であるが、この「悪魔の赤ちゃん」シリーズこそ代表作と言える。
 (allcinema)
 
あらすじ:
デイヴィス家に2人目の子供が産まれようとしていた。しかし今か今かと待っていた父親のフランクが目にしたものは分娩室で行われた血の殺戮。しかも犯人は生まれたての自分の息子だった。その悪魔の赤ちゃんは病院から脱走し、警察の目をかいくぐりロサンゼルスの闇へと消えていく-


It'sAlive_16「悪魔の赤ちゃん」といえば『ローズマリーの赤ちゃん(1968)』を思い出すけれど、あれは赤ちゃんそのものは最後に出てくるだけで、その産まれるまでの母親の恐怖とまさかの残念な結果を描いていた。対して本作はまず産まれる。しかしその赤子は突然変異の殺人モンスターで、分娩室にいた医師や看護師をいきなりなぶり殺して姿を消す。
このモンスター赤ちゃんの姿はなかなか画面にきちんと映らず、観ているこちらは自分の悪趣味加減と戦いながらたくましく想像することになる。このあたりは前回の『バスケット・ケース』とは大きく違うところ。しかし本作はこの想像して止まない赤ちゃんの活躍が主人公では無いという、ちょっと変わったホラー。
主人公はこのモンスターを産み出してしまった両親、とりわけ赤ちゃんの行方を追うことになる父親だ。この父親の怒り、苦悩、あきらめ、悲しみ、決断といったものが物語の主軸となる。
 
It'sAlive_11息子が1人いる夫婦は、長い間、妻がピルを飲むことで避妊していたが、予期せぬ妊娠を知ってどうするか悩んだ末に産まれたのがこの赤ちゃん。夫フランクが病院に付き添い、ロビーで産まれるのを待っている間のちょっと落ち着かない嬉しそうな様子。続いて起こる叫び声とともに見てしまった大殺戮。その犯人が自分の生まれたての息子だと知った時の茫然自失な様子。この短い間に巻き起こった夫婦の災難は、しかしそのままでやり過ごすことが出来ないものだった。大勢の命を奪ったのは自分の分身である息子だったからだ。

この事件は瞬く間に世間に知れ渡り、夫婦はマスコミの餌食となる。この悪夢は夫婦のせいだと言わんばかりの世間の声に、同情的な捜査担当の警部補や親しい友人が夫婦の力になってくれる。
ここまで観て感じたのは、この作品に悪いヤツが出てこないところ。赤ちゃんは殺人を犯すが、異形のモンスターだから仕方ない..。夫婦の周りの人々は良心的で何かホッとするものがある。
 
It'sAlive_15さて、何故今回このような異常出産が起こったのか。それはどうやら妻が長年服用していたピルにあるようだ。そのピルを開発した大学側は、その事実を隠蔽しようとしたりして、なかなか現実的な展開に。しかし話はそこに時間を割かない。自分の息子が犯したことの始末をつけるため、父親フランクは警察と一緒に行動し、赤ちゃんを捜索する。追い詰めては取り逃がすの繰り返しだが、時々、見える赤子の影。それは上の息子の小学校や自宅にまで忍び寄り、物音に耳を澄ますシーンはまるでヒッチコックばりにドキドキできる。それもそのはず。音楽担当は『サイコ』『』や『タクシードライバー』のバーナード・ハーマン
 
It'sAlive_13妻が止めるのも聞かず、自分の手で始末をつけようと赤ちゃんを探している父親フランクには、その固い決心がある種の憎悪と共に垣間見える。しかし実際にその目で初めて息子を見つけた時に流れる涙。その涙には異形であっても殺人鬼であっても、わき出てくる息子への愛が見て取れる。そしてフランクが決断し行動したこととは、社会への責任であったのだろう。
この後のラストもいい。原因がアレであるなら当然な結果だが、かなり絶望的。

 

 icon-film  監督ラリー・コーエン
LarryCohenアメリカ合衆国の映画監督、脚本家、プロデューサー。他人のための製作と脚本もあるが、コーエンが最も知られているのは、低予算ながら創意に富んだホラー映画、スリラー映画の監督としてである。
プロとしてのスタートはテレビで、多くの番組の脚本を書き、カルト・ドラマの古典『荒野の流れ者』(1965年 – 1966年。en:Branded)、『インベーダー』を作った。1972年、初の長編映画『Bone』(en:Bone (1972 film))を製作・監督・脚本。1974年の薬害のため鋭い歯を持って生まれた赤ん坊が人間を襲うホラー映画『悪魔の赤ちゃん』で注目を浴びた。モンスター映画だけでなく、『The Private Files of J. Edgar Hoover』(1977年)といった伝記映画も撮っている。
時間のなさと低予算のせいで、コーエンの映画は撮影も編集も雑だが、コーエンの自由奔放なアプローチ(および撮影所の影響からの独立)は、たとえば『ザ・スタッフ』の冷徹な食品会社のように、メジャーではなかなか扱えない対象への風刺的な攻撃を可能にしている。『悪魔の赤ちゃん3 禁断の島』では、キューバを悪魔に見せようとするアメリカをも痛烈に攻撃した。
 
■主な監督作
・Bone(1972)
・ブラック・シーザー(1973)
・ハーレム街の首領(1973)
・悪魔の赤ちゃん(1974)
・ディーモン 悪魔の受精卵(ディーモン)(1976)
・The Private Files of J. Edgar Hoover(1977)
・悪魔の赤ちゃん2(1978)
・ハイ・スクール・ウルフ(1981)
・空の大怪獣Q(1982)
・パーフェクト・ストレンジャー(1984)
・スペシャル・イフェクツ 謎の映像殺人(1984)
・ザ・スタッフ(1985)
・新・死霊伝説(1987)
・悪魔の赤ちゃん3 禁断の島(1987)
・殺しのイリュージョン(1987)
・おばあちゃんは魔女(1989)
・アンビュランス(地獄の殺人救急車狙われた金髪の美女)(1990)
・ホットシティ(1996)
・Air Force One: The Final Mission(2004/ドキュメンタリ)
・ハンティング(2006/「マスターズ・オブ・ホラー」の1編)
(Wiki:ラリー・コーエン)